日中をおとなしく家で過して、夜になってからふらふらと外出。吉田達也さんがドラムを叩く三バンド出演のライヴ「変拍子DE踊ろう! Vol.9」をみにいった。スターパインズにぎゅうぎゅうに押し込められた客のうち、バンドをやっているひとが七割いたとみた。わたしの前で見ていた楽器をかついだ若者たちは「参考になるなあ」といちいち感動していた。ひとつめは鬼怒無月ギターとナスノミツルベースとのスリーピースバンド、是巨人。「超絶ゥ!」とこころのなかで叫んだのはわたしだけじゃあなくって、客のほとんどが身を乗り出して演奏の手元をじいっと見ていた。二番目は、相棒の佐々木さんが怪我のために欠席、CD音源に合わせてドラムを叩くというふしぎなルインズ。ひとり舞台上でスポットライトに照らされて、耳をすませて音を聴き、首をやや傾げながら千手観音の如くドラムを叩きまくる吉田達也座頭市を見た。って、座頭市の話ばかりでごめんなさいね。アクシデントとはいえ面白いものを見た。後半はベースパートをキーボードがコピーしてこれもまたふしぎなルインズ。しばしの休憩をはさんで、たのしみにしていた「高円寺百景」。ずっと家にCDがあったのに、いま頃になって急におれブームがやってきまして、ここのところの景気づけ曲として盛んにハタリハウスでかけられていた高円寺百景、実はライヴを観るのははじめてだ。ドラムとベースとキーボードとソプラノヴォーカルがドラマチックな音の拡がりをドカンと生み出していて格好よかった。「混沌の美」という文句が頭のなかに浮かんだけれど、それは陳腐なことばだと気づいて取り消して一蹴した。だって変拍子の演奏は決して混乱することはないし、各パートと声が緻密に積み上げられた音楽だ。わたしは興奮していてきっとうしろから見たらおかしなリズムで肩を揺らしていたとおもう。四人が出し得るありったけの音が交わって、へんな生きものを生み出したのを見てしまった。へんな生き物の余韻をひきずって、ひとり小声で「ギャー」と声をあげながら自転車をこいで家に帰った。今夜もいいものを観た。