2005-01-01から1年間の記事一覧

大阪はあまり馴染みのない町だ。学生時代に府立体育館で空手の全国大会に出たことと、会社員時代に千里の万博記念公園に取材に行ったことくらいしかない。そんなまったくの初心者、ほぼバージンの大阪観光客がまず出向いた先は新世界。「大阪、きっとあなた…

ときは九日の金曜日宵の口、ところは浅草六区手前の呑み屋街の一店「鈴芳」、灯油ストーブで背中をあたためながら瓶ビールともつ煮込みを腹におさめたら、赤ら顔で浅草木馬亭。今宵の出し物は「玉川福太郎の浪曲英雄伝」。最終回である今回のお題は「天保水…

ゴダールの『アワーミュージック』、もう一度観ようと思ったその日は東京上映最終日だった。なんてこったい! じゃあ他の町で観たらいいじゃないか、と、新幹線に乗って名古屋シネマテークへ。名古屋のシネアストたちの巣窟は東京のどこか知っている場所とは…

本日、ハタリブックスがめでたく二周年を迎えました。二年が過ぎてもあいかわらず畳の零細出版社ハタリブックスは、社員は社長ひとり、オフィスは六畳間(台所付き)、主な業務は編集および出版(と家事と出稼ぎ)というあいかわらずにしてもあいかわらずす…

なにやらせわしなくなってきたさいきんの近況報告。その一、さいきん「何屋さん?」ときかれることが多いのだけれども、「お盆と笑顔ときどき文章」という説明をその場その場にあわせてつかいわけています。さいきんは商売の説明をするのがめんどうくさくな…

ひとつの曲を何度も聴いている。下心がある。ワクワクするようなタイトルのワクワクするような音楽があって、それを聴くことしかできないわたしが唐突に唄をうたおうと思いついたのは先週のよく晴れたある日のことだった。昨日も今日も明日も休みで明後日の…

よく晴れた秋の日。三鷹南口の江ぐちでいつも麺の量がまちまちなラーメンをいただいたら、そのまま家と逆方向の中央線に乗って遠出をする。財布の中身も今日の予定もすべて忘れて、ただわたしは列車の窓から外が見たかったのだ。青梅特快は立川を越えて拝島…

夏に部屋の音楽セットが壊れて以来どうにも音楽から疎くなっている。いわゆる音楽好きとは違うから部屋のレコードが増えることもないし、白いヘッドフォンの紐を耳から垂らして歩くたちでもないし、カーステレオといっても車どころか免許もないし、好きな音…

秋の東京の空は不安定で、十月は一年で二番目に苛々する季節だ。失くし物をするのはいつもこの時期で、財布を忘れて呑みに出かけたりエスカレーターを逆行しかけたり予定を寝過ごしたりのミスウッカリの日日。失くしたくない物があったはずだけどこの棚の許…

道玄坂を下って宮益坂を上がって欲望の谷をやり過ごしたら、きょうは月曜日。Y氏の月曜映画誌講義のために青山へ。今年は春から旅に出ていたので、十月半ばになって初出席。図々しくも正面のいちばん前の席で学生気取りで黒板に向かう。今日は「stop motion…

昨年のいまごろはどんなことをしていたんだっけ、そんなことを思うなんてめったにないことだけど、たわむれに記録を引き出してみたら、やはりあきる野に遠足に出かけて、よく晴れた寒い夜空の下で山の神のことを思っていた。たのしみにしていた恒例の遠足は…

帰国からいまだ十日足らず、リハビリなんて調子のよいことをスイースイッとぬかしながら、横丁焼鳥、富士そば、銭湯と、骨の髄まで宇宙日本武蔵野を堪能している平和な日日。かつての生活ペースを守ろうとして不安気だった三日間はとうに過ぎ、おいしいごは…

夜半のハモニカ横丁でビールとお新香。恋焦がれていた塩さばはヤマだと言われて厚揚げ焼きに変更、富士そばでとろろそばをズズズーとすすりあげ憑物を払う。たかが二ヶ月の空白では目に見えてなにがかわるわけではなくて、もちろんドアの内側に溜め込まれた…

自分てなによなんていう数千年前からある根源的な問いに答えはあるのかどうかはしりませんがおばかチャンの旅はドイツチェコポーランドの国境をまたいでスイスでおいしい水をいただいて膨らむばかりです。そんなミスハタリの武者修行も第三弾、不可能を通る…

先日のこと。彼女が押入れの整頓をしていたら、黄色いリコーダーが出てきた。木造アパートの午前一時。彼女は黄色いリコーダーを吹きはじめた。わたしはテレビの裏からメロディオンを出して一緒に吹いた。彼女がメロディオンを、わたしがリコーダーを吹いた…

きょうかたるきのうまでのこと。夕暮散歩の終着地、西荻窪音羽館で何度目かの武田泰淳『目まいのする散歩』を買った。古本屋の棚で見つけるたびに手にとって持ち帰っては誰かに渡すという、これは興味の暴力活動。百合子さんの『富士日記』ではなくて泰淳さ…

映画のことばかりを考えたいのにそうもいかない。だってそうそう映画を観られていないからだ。例外はある。とても不機嫌な話。飛行機のなかでブリジットなんとかというへちゃむくれ娘が勘違いの数々を繰り返す映画を観た。まったくなんて横暴な映画だろう! …

ふたつめの旅からかえってきたら六月に後ろ足がかかっていた。いろんなできことがあって、いろんな土地でいろんなひとにあって、そして音楽はいつでもそこにあって幼稚なおばかちゃんを勇気づけた。おばかちゃんは相変わらずの迂闊さと元来の粗忽さでバタバ…

ひとつめの旅についての話。第一目的地のモスクワで早々に挫けたおばかチャンはいろんなひとの好意といろんな物事の眩しさと音楽と世界の景色に助けられ掬われながらユーラシア大陸を縦横断。延々と同じ景色をロールしつづけるロシアの列車はまったくもって…

清水の次郎長一家がうちに草鞋を脱いだのだ。マキノ雅弘監督の『次郎長三国志』、この映画が世の中にあるということだけで生きていける、というのは岸野雄一さんの言葉だけど本当にそのとおり。山田宏一さんが『次郎長三国志−マキノ雅弘の世界』の序で「わが…

大嫌いな三月が過ぎ、桜と花粉と四月馬鹿を迎えて、相変わらずの身軽さで空旅演習札幌まで。せまい座席に不機嫌な顔で眠り、旅人気取りで昔なじみの町に入る。猫をいじったり廻る寿司をいただくのは明日の予定にして、本日は完全休息日。狸小路を抜けたとこ…

飽きもせずまたトリュフォーの『アメリカの夜』を観ている。今度は英語字幕。映画のラスト、撮影がすべて終わり解散する場面で、プロデューサー紳士が「さよならわたしのキッズたち!」とみなに声をかけるのがなんとも幸福な光景なのだ。さよなら! 映画の子…

大量のTシャツにひたすらアイロンをかけていた午後を終え、逃げ去るようにして池袋まで。新文芸坐で井口奈己監督の『犬猫』(三十五ミリ版)を観た。オープニングロールに生成の布を敷いているあたり、『小早川家の秋』だとかあのような日本映画の系譜にある…

午後、目白駅前の学習院大学へ行く。山田宏一さんの公開授業のお誘い。Y氏の月曜青山映画誌講義のもぐりこみ二年目、夏以降てんやわんや月間が続いてなかなかお邪魔できずにいたら、特別講義があるとお葉書をいただいた。Y氏はご自身の著作と同じような態度…

市川りぶるで低音環境。渋さ知らズ周辺人脈図のなかで、不破さんのベースの次にわたしがよく追っかけているのが高岡さんのチューバだ。大阪東京富山山梨そのほかあらゆる場所へ、大きくて重たいチューバを下げて旅をしているチューバ吹きの高岡さんは、いつ…

ミスハタリはついにどこかに埋もれたか。どっこい、しぶとく暮らしています。「どんな場面でも『忙しい』なんて泣きごとを言おうものなら恋が逃げますよ」と美人チャンに諭されて、なるほどなあ、と、わりあい素直なハタリちゃんは渋谷は千両のテーブル席に…

矢崎泰久『「話の特集」と仲間たち』(新潮社)を読んだら、眠るのがもったいなく思えてしまってからだが困っている。雑誌「編集会議」に連載された各章をこうして一度につづけて読むと、やけっぱちでやみくもでやさぐれにみせかけた情熱の青春物語に興奮す…

さてここで何度目かの『アメリカの夜』の話をしよう。とはいえ観ていないひとを相手に丁寧にお話をするほどわたしはこころが広くなんてないよ。トリュフォー? あれでしょ、ヌーヴェルヴァーグってやつ、部屋の壁に映画ポスターなんて飾っちゃって、あのボー…

午後五時半の上野ランデブー。別嬪ちゃんに倣ってアメ横を流した。彼女行きつけの鰹節ショップで一番だしをいただき、「菓子の仁木」を冷やかし、甘いお酒とタコスで乾杯。新しいお友だちが増えるのはとてもうれしい。酔っぱらうとゆかいな具合になるお嬢さ…

本場仕込みのチーズフォンデュで更けた夜は天変地異で朝を迎え、昨日のつづきではじまる長い一日。軍手をはめて尻に手ぬぐいをさして見様見真似で動いているうちに夕方になった。夜、渋さ知らズオーケストラのO-Eastライヴ。ナーダムの途中で会場に潜り込ん…