2004-01-01から1年間の記事一覧

市川雷蔵がぐずるわたしにお早ようと言った。もうすぐ雪が降り出しそうな朝、安普請の六畳間アパート通称ハタリハウスでは、一夜の役目を終えてすっかり冷えた湯たんぽに未練がましく足を寄せた寝癖頭のお嬢さんが、夜が明けてもまだまだ夢を見ていた。CS放…

日々が束になって過ぎてゆく様子を眺める暮れ。 二十三日、旧友ふたりを招いてクリスマス宴会。ハカセタロウ、ジャン・レノ、中尾彬、とまったく食指の動かないものばかりを三つ並べられた挙句に「あなたはそろそろお金の匂いを嗅ぎわけたほうがいいよ」との…

山本嘉次郎『男性No.1 顔役無用』(1955/東宝)を観た。「ビッグ」というあだ名の乱暴だが気の好い顔役三船敏郎と、要領よく稼ぎまわる色男ダフ屋の鶴田浩二が共演。松竹時代直後の鶴田浩二の動きはなんだか動きが時代劇。初期キャリアを見返せば決して時代…

「BOYCOTT RHYTHM MACHINE」(V.A./渋さ知らズ、DCPRG、ROVO、南博トリオ、ほか)というCDをかいました。いろいろ盛り沢山の本篇も素晴らしいのですが、タワーレコード限定の付録、十月一日新宿ピットインの渋さ知らズのライヴ演奏が特典なのだ! とかくわ…

入谷なってるハウスで低音環境。今夜は大原裕さんの特集で、不破さんのコントラバスと高岡さんのチューバで大原さんが作った曲を演奏。「映画音楽みたい」「顔に似合わずロマンチストだったのね」。大原さんの作った曲で今春のクアトロでエミリーさんが「じ…

あくまで当社比ゆえ表に出る数値ではないしこういうことを言うのは滑稽なのですが、最近感覚が鋭敏になっている。感受性というものがあるかどうかはどうでもいいのだけど、身体を通して言葉にして納得する、そのシステムの初期衝動がガツーンと大波でやって…

ゆかいなお酒をのんでいたら、ふたたび携帯電話が水に沈みました。うんともすんともキャンともいいません。電源が入らないので会いたい人にも電話ができず困っています。あらゆる可能性を新宿二丁目に落としてきました。まいったなあ。というのがミスハタリ…

最近のミスハタリはどうしているのでしょう。しばらく映画を観ることも叶わず、ただ電車のなかで平岡正明さんの『大革命論』を読み進める日日であり、そうか、革命という語は「レボリューション」の訳ではなくて、中国は前六世紀の『易経』にある「湯武革命 …

東京国際映画祭のコンペティション参加作品である、森崎東監督の『ニワトリはハダシだ』を観た。ヒューマンドラマとコピーをつけるといろんなものが感動のまがい物に隠されてしまうけれど、つまりは、当たり前の物事がいかに当たり前にこの世の中にあるかと…

早起きをして午前七時に飯をにぎったら、よく晴れた本日は洗濯日和で行楽日和なのです。「ホリデー快速あきかわ号」は、かしまし娘を秋の遠足へと導く。中央線脱出の定番、ひので山の白岩滝の岩場で弁当を広げて昼時を過ごしたのち、ひのでつるつる温泉のあ…

「『風船』のときに京都へロケーションに行ってて、ちょっとお天気待ちかなにかで時間があって、川島さんと二人でお茶を飲みながらいろんな話をしてるうちに「おれとおまえの間では“できない”ということは言わないという、そういう約束をしようじゃないか」…

マキノ正博『續清水港』(1940/日活)のビデオをようやく観た。マキノ監督の名娯楽シリーズ『次郎長三国志』でわたしは次郎長、さらには時代劇、チャンバラ、任侠世界に踏み入れて踏み込んで戻れないところまできてしまったのだけど、『次郎長三国志』でもの…

新宿ピットインで見る久々の渋さ知らズ、地下の空間なのにたしかに空が見えたのだ! 十月に何かが起こる、という予言は大当たりだった。あやさんの唄声ののびやかさ、ベースラインを吹く高岡さんの軽やかかつ底力に満ちたチューバ、そして短くなった髪の毛も…

井の頭公園をはさんだあちら側に、カメラと音楽をなりわいとして南国の風と猫を愛するすてきな女の子が暮らしています。互いにそれぞれ各駅停車で旅に出るのが好きで、『唐獅子株式会社』のビデオを貸し借りしたりして、そう、そういうことがしたくなったら…

「マチェック」という店が気になっていた。大和町に暮らすあの娘とはじめて会った日、細くて急な階段に誘われてお茶をいただいたのが、高円寺のマチェックを訪ねたただ一度の機会だった。絵心のあるあの娘とわたしははじめましてのご挨拶がわりに、版画カレ…

海辺からはじまる朝。出来こころでまわり道、藤沢から鎌倉行きの江ノ電に乗った。ドーナッツを食べながらの通勤時刻。休日は観光色の濃いこの列車もなんだか今日は暮らしに密着したにおいがしていた。線路近くの軒先には洗濯物。単線路面列車は家と家のあい…

藤田敏八『赤い鳥逃げた?』(1973/東宝)を観た。フィルムを切って貼ってつないでも、そこに描かれるどん詰まりの青春はその場で激しい足踏みを繰り返しもがき続けるばかり。男と男とすこし尻が軽い女の子が出会って積み重ねていく閉塞感。盗んだバイク、否…

「いわゆる演出というのは、僕の場合にはまったくないですね。現場に行ってもスタッフの側にいることはないし、だいたい僕は寝ていることが多いでしょ。僕はむしろそんなことより、討論していくなかで起爆剤になったりね。そんな意味でいっちゃえば、スタッ…

結局『アメリカの夜』はくりかえし三度観て、同じシーンで涙ぐみ、ついには字幕なしで眺めてはただただ笑った。嵐の夜半には『雨に唄えば』をふとんのなかから観た。この映画の素晴らしさは世界中のいたるところでみんなが微笑んでいるからいまさら言うこと…

フランソワ・トリュフォーの『アメリカの夜』。ドリュリューのメインテーマがかぶさる中盤のあのシーン、何度観てもやはりわたしは飽きずに必ず涙を流してしまう。笑いながらじんとする。そうだ、なにかが動いていく現場が好きだ。机上のうやむやなんてだい…

スカートの裾をたくし上げてホームを爆走したにもかかわらず、湘南新宿ラインは一分の差で出発したあとだった。平謝りから始まった土曜日。逗子駅前の定食屋で甲子園テレビ中継を眺めながら海鮮丼を食べ、満腹になったところで葉山の一色海岸へ。日傘をさし…

ユーロスペースでチョウ・ジェウン『子猫をお願い』(2001/韓国)の最終回を観た。高校を卒業して社会との折り合いを見出すまでの道を、各自それぞれに迷走していく五人の女の子たちのおはなし。二十歳の頃、そのとき絶望は希望と同義語であり一瞬の爽やかさ…

親孝行を投げ出してひとり出掛けたのは「ライジングサン・ロックフェスティバル」。まずはフジロックで観そこねた無戒(向井)君の弾き語り。いつしか記憶は妄想にかわるーとかなんとか叫んでいた。砂ぼこりのなかで肉にかじりつく函館夫婦のもとに押しかけ…

入谷なってるハウスで不破大輔さんのベースと立花秀輝さんのサックスのデュオを観た。渋さチビズのライヴで、ああいったいどこに行っちゃうんだろうといつもわくわくさせてくれる、しなやかな遊び心のある立花さんのサックス、その展開と奏法ともに耳だけで…

押入れの整理をしていたらずいぶん前の映画芸術かなにやらの記事コピーが出てきた。読まずにしまいこんでいたのだ(くれたひとはえらそうな顔をしていたけど、あいつも、きっと読んでいなかったにちがいない)。ちょうど『秋津温泉』を観たあとだったので面…

恵比寿ガーデンシネマでモーリス・ベジャールと彼のカンパニーを追ったドキュメンタリー『ベジャール、バレエ、リュミエール』(2002/スイス)を観た。新作公演までの日々のあれこれを追う舞台裏企画は、「現場主義」「祭好き」にとってはそれだけでじゅうぶ…

午前五時半、浴衣の衿から飛び出た左腕が寝違えてしまって動かない。朝市も朝湯も逃してひたすら腕をいたわる。『キルビル』でユマ・サーマンが足の小指を動かしていたシーンを思い出した。三十分後にようやく動くようになったので出掛ける準備をして階下へ…

僕らが旅に出る理由のひとつに「青春十八きっぷが発売になったから」というものがあるということをごぞんじ? そこに魅力的な温泉が沸いていて、手前まで線路がのびているなら出掛けないでいる理由はない。移動に対する原初的な欲求に従って時刻表と手ぬぐい…

『007/カジノ・ロワイヤル』(1967/英)はどうしてこんなに素敵な映画なのだろう。バカラック・メロディのせい、ウルスラ・アンドレスら美人揃いのせい、馬鹿馬鹿しく愉快な仕掛けのせい、誠実で柔軟な変態役者ピーター・セラーズのせい、デイヴィッド・ニー…

蝶柄の浴衣姿で夕暮れの外出。神田万惣で白桃パフェとホットケーキをいただくあそびをしたり、東京湾納涼船上でおにぎり一個でナンパされたり、夜の思いつきで東京タワーに登ってみたりと、夏の行事に忙しい。大人になったわたしには夏休みはなかなかやって…