マリア! 天上を駆ける音楽

ここ数日、わたしのメールボックスには、ヨーロッパのあちこちから「いまここにいるよ」「こんな食べものを食べたよ」「プレゼントありがとう」「元気にしてる?」と、英語、日本語、ときにローマ字で友人たちからメッセージが届いている。方々から旅の便りをきくたびに、世界はじつに平べったく、音楽とオムレツのにおいは、等しく空の下を流れるのだなと感じます。

そんな一方で、定住の晩夏を過ごすミスハタリは、ある晩にとつぜん、ハタ! と、「MARIA SCHNEIDER ORCHESTRAの音楽がどうしても聴きたい!」と思いついて、七月に発表になった新譜『SKY BLUE』をオーダーしていました(二年前のメールスフェスで同じ会場にいたというのに、観そびれたのがいまだ悔しい)。そのCD『SKY BLUE』が本日、ニューヨークから到着。わたしがオーダーしたのは、一万枚限定の限定盤CD『SKY BLUE LTD Edition』。レコーディング風景を収めた四十頁ものフォトストーリーと、このCDに収録されている曲が生まれた最初期の、マリア直筆によるスケッチなどを収録したブックレット付き。

手元に届くまでの一週間弱、今か今かとわくわくして待っていた。そして何度も何度も聴いている。端正で、繊細で、しかしながらとても大らかな、空のような海のような、あたたかく美しい音楽。山も谷もビルもあらゆる境界も、すべての妨げをフラットにして、爽やかな風と鳥の鳴き声を届けてくれる、そんな音楽。オーケストラのさまざまな楽器が重なり合うのだけど、スペースを音でベタ塗りすることなく、細い糸で刺繍をしていくような美しい重なり合いでとても心地よい。とくに四曲目、二十分間以上にも渡る大作「Cerulean Skies」の、隙間を縫う音の数々と、うつくしいメロディはからだに染み渡るように優しい。やはりクラリネットの音に耳が引き寄せられるのは贔屓だからだけど、アルトサックスも、フリューゲルホルンも、アコーディオンも、チューバの低音も、とても素敵。

わたしの耳にようこそ、マリア・シュナイダー・オーケストラ! いつか演奏を観たい。この夏もイタリアやブラジルのフェスティバルを訪れているオーケストラ。いつか観たい。アメリカで? ヨーロッパで? 日本にも来てほしいな。いつか呼べることがあったらいいなと、壮大な気分で眠る夜。そして雷雨のあとの東京の空には秋がやってきました。

MARIA SCHNEIDER ORCHESTRA】 http://www.mariaschneider.com/