お寺に舞う音楽、地下から湧き出る音楽

暦ではお正月明けとはいえ、いまだふわふわした気分の六日、外はよく晴れている、散歩がてらにちょっと遠い駅から歩いて牛込柳町へ。古くからの町と町に囲まれて人々の生活でぐぐっと盛り上がったような地形の、神楽坂から早稲田の丘のあたり、大黒天をまつる経王寺がある。小森慶子さんとアラン・パトンさんのデュオによるライヴ演奏が、経王寺の本堂で行なわれる。大黒様もご開帳している新春、なんともめでたくうれしい気分。第一部は、「語り女」の北原久仁香さんが、宮沢賢治の物語を朗読。なんとこの本堂には天井収納できるスクリーンがあって(!)、加藤龍勇さんの絵が映し出されながら物語は展開していく。張りのある声による語りに、奏者の二人がクラリネットやサックス、カリンバ、のこぎりや太鼓、時にエフェクターを通し、効果音や擬音など半即興の音楽をつけていく。第一部が終わると、スクリーンが天井に収納され、正面にお目見えしたのはお釈迦さまの仏像! 日蓮宗のあでやかな仏壇も美しい。その前で演奏する慶子さんとアランさん。慶子さんはクラリネットとソプラノサックスのほかにバスクラリネットも演奏。アランさんはアコーディオン。トイミュージックのようなオチャメな表情で笑ったり、クレズマーのしなやかさを感じさせたり、ジャズの執念をちらりと見せたり、むずかしいリズムを刻んだり、無邪気に踊ったり。「三時から法要があるのでここで終わります!」と昼の部は終了、買物帰りのビニル袋を提げたおばさんやご近所のおじいさんなど、お客さんもいろいろ。大黒様にごあいさつをして、今年の幸運を願いつつ地下鉄に乗る。慶子さんのクラリネットの音色はかっこいい。音の濃度を感じさせる演奏。わたしのクジャリネットも、あんな、濃い羊羹のような音を出せるようになりたい。
【小森慶子】

吉祥寺についていつものようにヨガで運動を済ませ、ちょっと早い時間にマンダラセカンドへ。奇数月の第一日曜日は「渋さ知らズ劇場」。昨年の欧州ツアー以降、ずっとライヴを観られる機会がなくて、数ヶ月ぶりに観た渋さ知らズサウンドチェックを覗くと今夜はすこし少なめのメンバー(といっても、マンダラセカンドの舞台に十人もいる)。ピアノの中島さっちゃんが久しぶりにいてうれしかった。ひさびさにお会いしたメンバーの方々にお年始のご挨拶をして、本番がはじまるまでにホルモン焼きとビールをごちそうになり、ライヴの前半を観る。「反町鬼郎」の途中でどんどん脱線していく様子に耳目を奪われる。賑やかで、だけど、賑やかだけじゃない音楽。