関西フィルで聴くワーグナー
錦糸町のすみだトリフォニーホールで行なわれた、関西フィルハーモニー管弦楽団の演奏会にあそびにいく。今回のプログラムはすべてワーグナーの楽曲で、ステージにはドーンとハープが四台、ホルン隊も増量されてワーグナーチューバが登場。クラシックのオーケストラは年に一度見るかどうかで、音楽的な造詣なんてゼロに等しく、やたらと繰り返されるカーテンコールの拍手の長さに呆れてしまうくらい、わたしはクラシックの門外漢なのだけれども、それでも関西フィルのワーグナーはおもしろかった。派手でわかりやすい楽曲、勢いある音楽はプロパガンダだ。昨年のプログラム「ショスタコーヴィチ 交響曲第5番 ニ短調 作品47」を見たときも「運動会のようだ」と思ったのだけれども、今回も舞台上は激しく、ガテンな雰囲気の漂う、まさしく「疾走する舞台」だった。
ソプラノとバリトンの歌手による張りのある歌声が壮大さを一層増す歌曲、誰もが(わたしでも)聴いたことがある「ワルキューレの騎行」ではトランペットやチューバの金管楽器がバリバリっと吹き乱れて、打楽器がチーンドーンと鳴り響く。クラシックの舞台でトロンボーンがバリバリっとした音を出しているのは珍しく感じられた。クラシックの音楽では、どんな楽器もなめらかで繊細な音(でも音量は大きい)を出すものかと思っていた。クラリネットやオーボエ、フルートの高音がその間を軽やかに走り抜けていく。やはり贔屓目にクラリネットに耳が傾く。クラリネットの音色はすてきだな。
こういう大きなホールでのコンサートをたまに見ると、驚くのは、その反響の素晴らしさ。完全アコースティックで、千人以上の観客のもとへ、きちんと音の粒を届けられるのは、演奏者のテクニックや表現の巧さだけではなく、環境が成すわざでもある。チューバの吉野竜城さん(ごぞんじ、鬼頭哲ブラスバンドのチューバ奏者でもあります)が、演奏直前にマウスピースにフッと息を吹きかける音だって、三階席最後列のわたしの耳に届いてしまうのだから、びっくりした。