台北・安全な散歩 1 台風と旅支度

ハタリとママハタリは、コツコツと貯めたマイレージを使って台湾まであそびにいくことにしました。つい先日観た小津安二郎の『秋日和』の原節子司葉子の母娘のような、あのしっとりした美しさにはほど遠いけれども、わたしたちも母娘。人生の先輩である母親との旅行を企画するというのもまたおもしろいものです。身軽でチープな「ひとり旅」とはちがい、安全で清潔で、適度に観光を織りまぜた台北散歩は、ここ数年でまれにみる「旅行」となりました。

しかし出発前夜に台北に大型台風が直撃! 天気予報を見つめながら、遅足の台風にはらはらしながら眠った夜。幸い、翌朝からは飛行機も無事に飛びはじめ、予定通り出かけれらることになりました。

三泊四日という短い日程、フライトが三時間半程度ということもあり、かなり気楽だった今回の旅支度。ただしママハタリという年上の女性との旅行なので、いつもの旅とは勝手がちがいます。

航空券はマイレージ利用とはいえ、空港利用料や税金は別途必要(成田〜台北、わたしの場合は一万五千円程度でした)。ホテル選びはインターネットで口コミを徹底的に収集。「ツアー観光客があまり利用しない」「日本語よりも英語が通じるほうがいい」「朝食がおいしい」の三点を重視して二軒をセレクト。台北空港から市内へのアクセスは近くて楽そうなのでここは節約してバスを利用。その分、品川駅から成田空港までの移動をランクアップ。「旅行」に大事なのは「旅気分をもりあげる」ことにある。どうせだったら成田エクスプレスに乗って、ちょっとおいしいお弁当でも食べながら向かいたいじゃない? いや、むしろわたしが乗りたいし食べたい。東京駅では二方向からやってきた車両が連結するさまを見ることができて気分がもりあがったりしてね!

お弁当を成田エクスプレスに持ち込んで、いざ出発。ハタリの『秋日和』台湾小旅行のはじまりです。


台北・安全な散歩 2007】
1 台風と旅支度  2 出発 3 欧華酒店 4 町と食欲 5 町と好奇心 6 台北商旅慶城館 7 猫カフェにて 8 小龍包と女の子 9 台湾新幹線 10 帰国

台北・安全な散歩 2 出発

成田空港第二ターミナル。ここからはアエロフロートの飛行機しか乗ったことがない。今日乗る飛行機は日本アジア航空。荷物を預けて、展望デッキに飛行機を見に行く。天気がよくてきもちのよい午後。たくさんの飛行機が羽を休めている。サテライトへ向かう黄色いシャトルもひさしぶりだ。ちょうど搭乗する頃には夕暮れとなり、離陸するときの空がきれいだった。

昨日の欠航の影響なのか台北行きの飛行機は混みあっていた。機上では、個人用テレヴィジョンで映画を観た。『サイン・シャネル カール・ラガーフェルドのアトリエ』(2005/仏)。これはフランスのテレビ局(?)が制作した五つの連続番組で、シャネルのオートクチュール・ショウのメイキング。華やかなオートクチュールの世界の裏側、とくにお針子さんたちの現場がメインステージ。これがとても面白かった。すっかり夢中! カールの指についた十一のデコラな指輪と、アトリエのお針子のおばさんたちと、田舎のガロン職人のおばあさんと、チョコレートの誘惑について。この「現場」の物語はほんとうに面白かった! 機内食なんて食べている暇なんてないよ。

たった三時間半のフライト、午後七時に台湾の桃園国際空港に到着。荷物を転がしながら空港のバスカウンタへ。台北市内行きのリムジンバスは四社から出ていて、だいたい120元(NT$)程度。わたしたちが泊まるホテル「欧華酒店(リヴィエラ・ホテル THE RIVIERA HOTEL)」の前にはバスは停まらないので、台北車站(台北駅)行きのバスに乗る。一人125元。タクシーだと大体1500元ほどだというので、バスはほんとうに安い。時間のせいなのか、それともバスは頻繁に出ているせいなのか、車内はとても空いていて、外国人観光客(つまりわたしたちのようなよそもの)は他に見当たらなかった。雨の高速道路を四十分ほど走り、終点の台北車站到着。

そこからタクシーでホテル「欧華酒店」へ。フロントやドアマンが穏やかでとてもきもちのよい歓迎をしてくれた。ホテルの部屋に入り、さっそくお茶を煎れようとしたら、ママハタリがおもむろに出したのは成田空港で買ってきた大福。台北でなぜか和菓子をいただきながらお茶を飲む夜。


台北・安全な散歩 2007】
1 台風と旅支度  2 出発 3 欧華酒店 4 町と食欲 5 町と好奇心 6 台北商旅慶城館 7 猫カフェにて 8 小龍包と女の子 9 台湾新幹線 10 帰国