座頭市ブックのカタログ制作、実務がようやくはじまる。今日は『座頭市の歌が聞える』。歌好きな勝新もこの作品ではまだ歌っていないのになぜかこのタイトル。よく『座頭市喧嘩太鼓』とゴッチャゴチャになる。もっとも重要なところは女郎役の小川真由美。その諦念に満ちた艶やかさにノックダウン。後半、斬ることをやめようとした市が再び刀と仕込杖を握りしめたときに暴発する制止不能の攻撃力。市は自分と仕込杖が生み出す行為を「他者を斬る」という自発的な動作ではなく、「斬ることこそが必須事項である」という、その他に選択の余地のないものとして認識し直す。だから強い。座頭市は刀と仕込杖の二刀流で55人ものやくざ者をぶった斬る。その行為はもはや「対象」を必要としたものではないのだ。