秋のはじめからずっと愉しみにしていた新宿御苑薪能、ざんねんながら雨で流れてしまった。そのかわりに濡れた足をひきずってバウスシアターへ。昨日につづいて「サラヴァの夕べ」。三日目で最終日の今夜は、アコーディオンをテーマにした長篇『Nuits de Nacre'91』。テュールで撮られたドキュメンタリーで、リシャール・ガリアーノタラフ・ドゥ・ハイドゥークスらの演奏シーンが堪能できた。今日一日かかってピエール・バルーが編集し直したというできたてヴァージョン。なかでも、タラフが、朝から昼は路上で演奏し、そのまま演奏し続けてライヴ会場入りし、ライヴで演奏し、もちろんアンコールにもたっぷり応えて、客が帰ってもステージ上で演奏は続き、夜道を演奏しながら歩き、部屋に戻ってからもまだやっている、というしつこさが愉快。各国(という括りはもはや意味を成さないけれど)のアコーディオン奏者が七人ほど集まってセッションしているシーンもすてきだった。このあたりの音楽がすきだ。祝祭の音楽、その賑やかさもいいけれど、なにより根底に流れる「泣き」のメロディに惹かれるのだ。渋さ知らズでいうならば「P-chan」のあとの「犬姫」かしら。
上映終了後に、ギター、パーカッション、フルートとの生演奏。そしてチョッキ姿の気さくなピエールさんは「ロビーで待ってるよ!」と手を上げて出ていった。わたしはフロントで『Dites 33 Vol.2』という、83年にパリのカルダン劇場というところで行われたライヴ盤(清水靖晃ムーンライダーズとの共演)を買ってサインをねだった。「メルシーボークー」と握手したら、思っていたよりもやわらない手のひらだった。「オーヴォワー」と、今じゃ四つしか発音できないフランス語で挨拶。

残りのふたつは「ボンジュール」と「ウーソントワレット?」。