十年前の深夜映画―ドノバン珊瑚礁

モテるおっさん

ずいぶん前に、飯田橋の藤井さんからいただいたジョン・フォードの『ドノバン珊瑚礁』(1962/米)のビデオ。十年ほど前に深夜テレビで放映されたノーカット字幕版を録画したものだ。映画の前後のコマーシャルでは眉毛の太いおねえちゃんが車情報誌の宣伝をしていた。テレビ放映の録画ビデオは、何年も過ぎてから観直すと、懐かしいというよりむしろ新鮮でおかしくて面白い。コマーシャル部分も早送りせずに全部観た。子どものころ、夜更かしして観る深夜の洋画放映のダラダラした空気が好きだった。吹き替え版の『007 カジノ・ロワイヤル』とかね。

南太平洋上の孤島に、戦争の際にたどりついた男たち。医者になり島に病院を作って貢献する男、軟派な総督、風来坊の暴れ者、オンボロ教会を守る神父、酒場を切り盛りする男など。酒場の名前は「ドノバン珊瑚礁(Donoban's Reef)」。アイルランド男のドノバン(ジョン・ウェイン)と戦友たちはいつも殴り合いの喧嘩かお酒を飲んで騒ぐか、大騒ぎばかりしている。ドクターディダム(ジャック・ウォーデン)は島の王女と結婚して三人の子をもうけ、王女は末子の出産で命を落としたが、子どもたちはすくすくと元気に育っている。ドノバンは子どもたちのよい遊び相手で、ヤンチャ盛りの子どもたちに日々さらなるヤンチャを仕込んでいる。

ある日、ボストンからドクターヴィダムの娘と名乗る女性が島に乗り込んできた。ディダム家は汽船会社で、戦後そのまま帰らない父親の代わりに、娘のアミリア(エリザベス・アレン)が社を相続することになった。相続を前にしてアミリアはまだ見ぬ父親に会うために島にやってきた。が、金持ちの令嬢にとっては島は「未開」の地。鼻持ちならぬお高い態度と気性の激しさから、迎えのカヌーを出したドノバンと顔を合わせたとたんに衝突。総督の入れ知恵で、三人の子をドノバンの子どもということにして令嬢を迎え入れる、が…。

ジョン・フォードお得意の、「男たちの友情と地域の人々の交流」、「アイルランド人ならではの派手な殴り合い」、「ジョン・ウェインと若くて勝気な女の恋」という三本立てが、南太平洋のどこの島をモデルにしたのか、奇妙な島を舞台に繰り広げられる。三人の子どもたち、特に次女がとてもキュートで、取り立てて新しくも面白くもない物語を最後まで飽きずに観られるのは子どものかわいらしさのおかげ。ディダム家の給仕が日本人女性なのが悪い冗談みたい。全体的に冗長で、出来事もすべて予定調和で、女優もいまいち美しくないのだけど、後半のクリスマス礼拝のシーンの「演出」だけは面白かった。

ドノバン珊瑚礁 [DVD]

ドノバン珊瑚礁 [DVD]