Y氏の月曜映画誌―「着る女 脱ぐ女」

美女の迫力

月曜日の愉しみは「Y氏の月曜映画誌」講義。昨年までは、山田宏一さんの講義は青山学院大学でも開かれていたので学生のふりをしてもぐりこんでいたのだけど、今年は学習院大学での公開講座のみというご案内をいただいていた。夕方、学習院大学の月曜日の六限の授業を受けに目白まで。

本日のテーマは「着る女 脱ぐ女」。ジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督によるマレーネ・ディートリッヒの衣裳狂ぶりを中心にいくつかの映画を観る。衣裳と共犯関係にある女優ディートリヒの美しさにため息。『嘆きの天使』(1930)では男を魅惑する愛らしいショーを見せ、『モロッコ』(1930)では男装の麗人、『間諜X27』(1931)の冒頭シーンは雨に濡れるディートリヒがストッキングを引き上げる、その脚の美しさと湿った質感の妖しさといったら! そして仮面舞踏会のような乱痴気騒ぎのパーティでディートリヒが身に纏った衣裳は羽だらけの不思議な黒装束。保存も難しく、この映画のためだけに用意された衣裳で、衣裳用の絵コンテまで描かれたのだという。『上海特急』(1932)では寝台列車内を豪奢なガウンで歩き回り、涼しい唇から情熱的な言葉をつむぎだして男を魅了する。『ブロンド・ヴィーナス』(1932)では本物かと見紛うようなゴリラの毛皮の着ぐるみで登場し、手、首、上半身、の順に脱いで露出していく「ゴリラのストリップ」を披露。指先が見えただけで美女だと確定できるあの迫力!

タンバーグの戦後の作品『ジェット・パイロット』(1957)で、ジョン・ウェインジェット・リーを「脱がす」一連の流れを挟んでから、最後に参考作品としてロジェ・ヴァディムの『バーバレラ』(1957)。無重力の宇宙船内でジェーン・フォンダが茶目っけたっぷりに宇宙服のストリップを見せ、丸く柔らかそうな裸が見えたところでチャイムが鳴ったのだった。