真夏のフィナーレと清水湯

八月十五日の早朝六時。駅前まで散歩した帰り、家のドアを開けようとしたら、背中に涼しい風をかんじて振り返ると、マンションの向こうに広がっていた青空がすっきりと乾いていた。あの瞬間が夏の終わりだった。

とか、なんとか、センチメンタルなふりをしてみたって、その後も東京の気温は三十度を超えている。路傍の猫は日影でぐんにゃりしながら夜を待ち、ハタリは水風呂に浸かって暮らしています。

さて、今年も神宮外苑花火大会の夜。この夏二度目の浴衣でパタパタと動いたあと、午後十一時に急に「いまこそ銭湯だ!」と思いついて、青山三丁目の清水湯へ。表参道駅から歩いて数分、青山通りからちょっと路地を入ったところにあるこの銭湯、うわさには聞いていたけれど、予想していたよりも風情があってよいお風呂。下足札を抜いて、男湯と女湯に分かれた扉を開けると、目の前に店番のおばあちゃん。カウンター形式なのだけどちょっと番台のようでもあって、おばあちゃんの後ろにはすぐ脱衣所があって、お客のおばあちゃんが湯あがりのからだを冷ましをしていた。そう広くない浴場のなかに、後から付けたらしいオレンジ色のシャワーブースがあって、はてな、という気分にはなったものの、天井が高くて、上のガラス窓に描かれた美人画もなかなかすてき。ちょっと深めの湯に浸かったら、ふーっとため息が出た。

湯上りのからだで青山通りを歩いて、アイスを食べる。夜の青山、表参道。湯上りで歩くのはなかなか爽快。もう夏が終わってもいいな。そろそろ秋を迎える準備をしたい。そう、こうして銭湯の湯上りが気もちのよい季節へと世界は向かっているのだ。

【清水湯】 港区南青山3-12-3 03-3401-4404
表参道駅から青山通り青山一丁目方向に進み右手、いまは紀伊国屋スーパーが建つ手前の路地を入るとすぐに看板があります。昔ながらの「町の銭湯」としての佇まいが愛しい。夜は0時までのようです。