山中湖 センス・オブ・ワンダー

ひさしぶりの「ムー部」活動。「ムー部」とは、おとなげない方法でやけにアクティヴな旅をする部活動。マヤ&モモというキュートな女子ふたりと一緒に、これまでにも「四人用テントに十人宿泊、苗場メタモルフォーゼ」や「深夜バスで早朝ノリウチ、京都タワー地下銭湯入浴」や「大型台風直撃、沖縄ドライヴ」などの部活動をしています。今回は山中湖交流プラザきららというところで開催される[Sense of Wonderという屋外イベントへ。

午前六時に起きて、新宿西口バスターミナルに向かうも、バス会社の端末が壊れるというトラブルで乗り場は大混乱。結局予定より一時間遅れで出発。休日の中央道は大渋滞、山中湖に着いたのは午後一時。二階堂和美さん+内橋和久さんの出番が終わったところ(そのあと、控室のある建物のテラスでタバコを吸っている内橋さんが見えた)。早い時間には、ケニアダンスのアニャンゴも観たかったんだけどな、ざんねん。

終日重い雨雲が空を覆っていて、湖の向こうにはちっとも富士山は見えやしなかったけれど、足場の整った公園と、ほどほどのにぎわいで、ちょうどよいボリュームのフェスティバルだった。OOIOO、ヨシミちゃんがトランペットを吹いたとき、とてもかっこよかった。歌って、すぐに歌の続きのようにラッパで歌いあげる。ヨシミちゃんはいつだってヨシミちゃんで、ほんとうにハッとさせられる。

夜は高木正勝さんによるオーケストラ。今回、これを観たいがために山中湖遠征を決めたのだけど、開催直前に発表されたタイムテーブル(いろいろ事情はあるのかもしれませんが、さすがに一週間前に発表というのは、お客さんに不親切ではないかとおもいます)ではトリになっていて、予約済みのバスに間に合わないじゃないかーとあわてて宿をとってまで、こころ待ちにしていたステージ。高木正勝さんはピアノ演奏と映像、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ペダルスチール&ギター(高田漣さん)、ボーカル、パーカッションといった、鍵盤楽器と弦楽器、打楽器による十人強のオーケストラ。サウンドチェックのときに高木さんが「ZAKさーん」と呼んでいたので、今回も音響はZAKさんだったみたい。

はじまってすぐに、あ、しまった、そうだった、高木さんの音楽はあまりライヴ向けではないのだった、と、数年前にキリンアートスクエアで観たときの記憶がグーンとよみがえってきたのだけど、中盤から様子がかわり、グングンと引き込まれた。ピアノ独奏による「girls」、『COIEDA』のDVDにも収録されているとても美しいムービーがスクリーンに映し出され、高木さんの上手いんだか下手なんだかよくわからない手つきによる美しく実直なメロディが鍵盤の上を駆けていったとき、ひさしぶりのしそ焼酎でほろ酔いだったわたしは、また時間軸が狂うようなちょっぴりセンチメンタルな快感に襲われたのでした。この音楽に関して、いつもわたしはごく個人的な記憶と感傷と感動を呼び起こさせられる。ノスタルジーの汎用性を感じるのだ(そんなことを以前『COIEDA』について感じて書いた記事はこちら)。

アンコールの曲もすてきだった。以前ライヴを観たのはずいぶん昔のことなので、印象がかわっているのは当然なのだけど、想像していた以上にフィジカルな強さをもった音楽になっていた。オーケストラという構造(といっても小編成だけど)そのものがもつ強靭さがあるかというと多少疑問ながらも、個々のミュージシャンがそれぞれの方法でメロディを支え、発展させ、ひとつの光に向かっていくさまは美しい。

でもできればこの音楽は夜ではなく、夕暮れどきに観たかったなあ。あと、海外での高木さんのコンサートも観てみたいなと感じた。あれっ、考えてみると、わたしが音楽フェスティバルというものにあそびにきたのはずいぶんひさしぶり、ヨーロッパで参加したフェスティバル以来だったんだなあ。