二階堂和美『ハミング・スイッチ』

予定がかわって、火曜日の夜が空いた。さて、どうしようと調べものをしていたら、ちょうど二階堂和美さんのワンマンライヴがあるという! ナイス! タイミング!

ここ数年、思い立ったその日に出かけていくことが多いので、事前にチケットを買うことなんてほとんどなかった。現場や裏舞台に入ったり、お酒を飲みながらチャージを払ったり、ときには投げ銭だったりして、なかなか「チケット」を予約する機会がなかった。お休みの夜と二階堂和美の音楽が重なったところで、財布をぱかっと開いて一枚予約、お買い上げ。

ニカさんのライヴを観るのはずいぶんと久しぶりだ。行こうと思うもすでに用事が入っていたり、行くつもりがうっかりして忘れたり、何度も観逃しているうちにニカさんは広島に移っていた。ついこの間、九月の山中湖でのイベントで内橋和久さんとのデュオを観られると楽しみにしていたら、バスが中央道で渋滞、たどりついたときにはもう終わっていた。今回は「初めて」のワンマン「ツアー」。渋谷クアトロを幕開けに、名古屋や大阪、広島をバンドで巡るという。バンドはmama!milkの生駒祐子さんがアコーディオンを弾き、赤犬からギター&ベース&ドラムが助太刀に、そしてピアノは渋谷毅さん! その豪華なメンバーに囲まれて歌う二階堂さん。

クアトロに入ると会場にはラジオが流れている。ニカさんが広島で担当しているラジオ番組に倣った出張版。午後七時をすぎたあたりで静かにメンバーが登場し、暗闇からニカさんが現れると、はじまるはじける歌のショータイム。身振り手振り踊りつきで、二階堂さんは身体いっぱいで音楽をうたう。ギターも弾くけれど、このひとは歌手なのだ。うたを「うたう」ことで伝える。音楽が身体表現であり、幸福のひとつの形であることをめいっぱい表わしている、とてもたのしいステージング。衣裳替えは三回(!)、ファーストアルバム収録のなつかしい曲を弾き、「今日を問う」で魅せ、「LOVERS ROCK」が強く響き渡る。また、サザンオールスターズの「真夏の果実」や江利チエミの「新妻に捧げる歌」など、カバーも多く歌った。やっぱりわたしはニカさんのオリジナル曲をもっと歌ってほしいと思うのだけれど、ニカさんがカバーする歌はどれも元曲からして素晴らしく、ニカさん自身が敬意をもって「歌手」として歌うのを目の当たりにすると、やっぱり圧倒されてしまうのだった。ニカさんはきっと、カバーもオリジナル曲も、わけ隔てなく等しい「音楽」として見ているのだろう。そこにある「音楽」を「歌う」ことを、表現としているのだろう。

渋谷さんはじめメンバーの演奏もたっぷりたのしめた二時間半がすぎ、やや長いセット転換のあと、アンコール。YOUR SONG IS GOODが登場して「関白宣言」を披露。ゆかいでたのしく、ちょっとしんみりしちゃう素敵な曲。「関白宣言」は、先月リリースされたミニアルバム『ハミング・スイッチ』にも収録。この表題曲は日産MARCHのコマーシャルソングから広げられた曲。さわやかで、かわいくて、わたしも「しあわせマチ子さん」になってどこかに出かけたくなる一曲。声の感じと歌い方もあってむかしの斉藤由貴を思わせるなあ、なんて思っていたら「卒業」も歌ってる! 松本隆作詞/渋谷毅作曲という悲鳴もののコンビネーションによる「つるべおとし」も、ニカさんの歌声で初音源化。これ、ドラムが外山明さんだよ! プロデュースは鴨田潤(イルリメ)さん。

ハミング・スイッチ

ハミング・スイッチ

【二階堂和美】