あなたの台割見せてください

実はいま、怒涛の突貫工事で、あるミニブックを製作中。本といっても「再編集」にすこしの「書きおろし」追加なのですが、それでも初版時とは印象のちがうものをつくらねば意味がないので、新たに構成し直しています。

本をつくるとき、編集者は「台割」というものをつくります。台割というのは平たくいえば、本を完成させるための設計図。どのページになにが書かれるか、ということが記してあります。この台割を通じて、デザイナーや印刷屋さんと一緒に本をつくることができます。「ふむ、このページは左側だから写真の向きはこっちのほうがかっこいいな」とか「この折り(一折=十六ページ分)は原稿が揃ったから先に印刷にまわそう」など。自分のなかで内容を整理するためにはもちろんのこと、協働するひとたちとどこを目指しているのかというイメージを共有するために不可欠のものです。

いわゆる編集者がつくる台割は、ページでふりわけた表の一行一行に文章で内容を書き込んでいく、エクセルなどを用いた表体裁のもの多いけれども、わたしがずっと使っているのは、四角い見開きページの枠がたくさん並んだ「図」。この枠だけのものを印刷しておいて、そこに鉛筆で内容をあてこんでいくのです。書き損じてしまったときも、気が変わってあっちとこっちを入れ替えようというときにも、消しゴムと鉛筆で簡単に直せます。入稿済みのページにはマーカーでチェック。わたしが最初に仕事を覚えた編集部で使っていたのがこの「図」で、わたしはよその編集者の台割を見たことがなかったので、台割とはこういう「図」のものだと長らく思っていました。わたしにとってこの台割は、本つくりにおける最初の儀礼。まず鉛筆を動かして書くということが、「これからあたらしいことをやるのだ」という興奮を誘うのです。もちろん、なにがどう配置されるのかが目に見えるので、内容のバランスを保ちやすい。台割をつくる作業は、頭のなかに雑多に浮かんだたくさんの思いつきを、本というスタイルにおとし込む際の禊のようなもの。よその編集者の方々はどんな台割をつくっているのか、のぞいてみたいものです。