二〇〇八年 暮れのごあいさつ

二〇〇八年もふつつか者のハタリブックスでしたが、お付き合いのほど、まことにありがとうございました。ハタリが見た風景とお仕事を中心とした十二ヶ月をふりかえってみます。

【一月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200801

井口奈己監督の映画『人のセックスを笑うな』劇場プログラムにて、イントロダクションとストーリーと、HAKASE-SUNの音楽についての文章を書かせていただきました(→)。そういえば学生時代に映画会社に就職したくて(そしてその後、幸運にも映画会社に入社したんだけど)、そもそも、その理由というのが「映画の劇場プログラムをつくりたい」というものでした。それが紆余曲折ウロウロして約十年間、いまときどきそんなお仕事をいただくことがあったりして、人生というのはふしぎでしあわあせなものだなあと思う次第です。この映画『人のセックスを笑うな』は前年の内覧試写で観たときから、好きな映画だなと思っていて、その映画をつくった井口監督から声をかけていただけたことが、ほんとうにうれしかったです。映画はシネセゾン渋谷ほかで全国公開され、あちこちで男の子/女の子の青春をわしづかみにし、かつて男の子/女の子だったひとたちに恋のぬくもりとエロスと残酷さを思い起こさせ、大きくヒットしました。映画についてその後ハタリが書いた文章はこちら(→ )。


【二月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200802

鬼頭哲ブラスバンド のコンサートがつづきます。九日は名古屋「鬼頭哲ブラスバンド Making」で公開リハ&ライヴ(→)。はじめてのN700系に興奮しながら正午すぎに名古屋駅に降りると、くもり空からはらはらと雪が降りはじめ、ライヴ終了後には世界はすっかり真っ白。ハラハラの東名帰りとなりました。十一日はザムザ阿佐谷で「鬼頭哲ブラスバンド ワンマンライヴ&ワークショップ」(→)。企画製作係として、リーダーが渡欧で不在の昨夏から準備してきたこの公演が終わり、ようやく長い夏気分が終わりました。名古屋&東京のみなさん、たくさんのご来場ありがとうございました。で、後半はその責務から放たれた軽やかな足取りで、ひとり冬の旅情を満喫、「ミスハタリの道北旅」(→)。帯広→釧路→釧路湿原川湯温泉→網走→札幌という、ひじょうに遠まわりなルートでの里帰り。蒸気機関車や流氷ノロッコ号に乗ったのがたのしくてうれしくて! この道北旅のテキスト、そのうちミニブック化する予定です(「マドモアゼル旅かばん叢書」というネーミングまでは決まっています)。


【三月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200803

アコーディオンを弾いたり、クラリネットを吹いたり、桜散歩に出かけたり、ワーグナーを聴きにいったり、あそんでばかりであんまり仕事をしていなかったようです。宮脇俊三さんの本を読んで(→)、道北旅から帰ってきたばかりのくせに、早々に旅心がうずいています。


【四月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200804

前半、鉄道会社のハウスエージェンシーへ出稼ぎ。駅直通のきれいなオフィスで、休み時間に時刻表を読み放題! その後、別の出版社への出稼ぎをはじめ、いままでまったくなじみのなかった「実用書」の校正に明け暮れる。あやとり本の校正でひもを渡されてひたすら「五段はしご」などを試していたのもよい思い出。十八日から東京脱出。上野発の夜行列車「あけぼの」に揺られて、「ミスハタリの秋田旅」(→)。秋田内陸縦貫鉄道、かわいかったなー。五能線男鹿なまはげラインにも乗り、田沢湖や角館では例年より早咲きの桜がお出迎え! 五能線から見た日本海に沈む夕陽が泣けた。この旅日記もそのうちにミニブックにしようと思っています。たぶん。


【五月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200805

出稼ぎの日日。磨耗するその合間に東京を脱出。鬼頭ブラスの「杜の宮市」演奏にかこつけて、神戸→大阪→一宮へとライヴめぐり。かつての同居人カーリさん(id:kaef)が大阪箕面桜井市場ではじめたお店「はにほへと」の開業前にお邪魔しました。秋にオープンしてから、いろんなライヴやイベントや、お茶やお酒(や、たぶんカレーも)がたのしめるお店になっているそうですよ。ハタリブックスとは名ばかり、さいきんは「企画」仕事が先行しつつあるせいか、広告系のイベント・音楽キャスティング仕事もありました(→)。tegwonは実にかっこいいバンドです。


【六月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200806

やっぱり出稼ぎの日日。東京メトロ副都心線が開通したり、バレエのレッスンを再開したり、カンカンの具体的な企みをはじめたり(→)、秋以降のコンサートの企画を立てたり、十年前の友人に再会したり、三十二回目のたんじょう日がやってきたり。向田邦子さんのことを考えたのがちょうどその日でしたとさ(→)。


【七月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200807

予定が倍に伸びて出稼ぎの日日。日比谷野音渋さ知らズを見たその翌日にパーティはカナダへ出発(→)。ひさびさに「どこにいっても渋さ知らズ」の空気感を味わった暑い夜だった。カンカン・プロジェクト始動(→)。興味のある女の子はお気軽にお問い合わせください。


【八月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200808

まだまだ出稼ぎの日日。月初、真夏の東京のルーティンでからっからに干からびる寸前に、またしても東京脱出。夜行バス利用の二泊三日で、名古屋→飛騨→富山→松本を駆け足でめぐる「ミスハタリ 水の旅」(→)。水と鉄道を求める一途でハードなひとり旅。月末には札幌里帰りと函館本線山線へのむりやりな遠足、「八月札幌夏仕舞」(→)。モエレ沼公園が良かったです、って、この時期もまた仕事をしていないようですが、秋のコンサートやライヴの仕込みに勤しんでいました。コンサート二ヶ月前のこの時期は、主に会場との交渉、フライヤー制作、ウェブサイトのシステムつくりなど。


【九月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200809

出稼ぎ最終段階。労働とカンカンに明け暮れる。勝新座頭市とカワイイキャラクターからほぼ同じ時期に呼び出しを受け、ときどき京橋や六本木で打ち合わせ。身体の疲労に負け気味で、バテ気味、木更津で行なわれた「天幕渋さ 木更津大作戦」(→)こと渋さ知らズの私設テント公演も二日間日帰りで観にいくという軟弱ぶり。アベタさんをはじめ、舞台ガテン系のひとたちに敬礼! と、一応東京脱出の列車には乗ったものの、千葉内房木更津なんて旅ではない。またもや帰ってきたばかりのくせして、旅に渇望。あー、「急行ほたて」で遠くにいきたい! って、それは宮脇俊三さんの展覧会のハナシね(→)。


【十月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200810

ようやく終わった出稼ぎ労働者の日日! わたしはわたしの仕事をするのだ! と、ようやく空いた身体を待ち受けていたのが、十八日に控えた鬼頭哲ブラスバンドのコンサートの準備。インプラント手術後の鈍痛で集中力を欠きながら名古屋へ出張(→)し、打ち合わせや舞台下見やリハーサルなど。やることは山ほどあるのに、名古屋を抜け出て秋を探す旅、「ミスハタリ飛騨路を行く」(→)。岐阜→高山→飛騨古川→白川郷→松本と山越え。飛騨路は夏に来たばかりだけれども、季節がかわればまた旅は別物になる。帰宅後にはすぐにまた机に向かい、コンサートの仕込み。十八日、名古屋市北文化小劇場にて「鬼頭哲ブラスバンド 風光楽壇宵噺」(→)。和の舞台で、ブラスのコンサートではありえないアレコレをせっせといろいろ仕込めてたのしい公演になりました。口上台本を書いたりもしました。面白かったけれど、ものすごく働いた気がする。あと、関係ないけど、綾瀬はるか主演の映画『ICHI』公式ビジュアルブック(講談社)のなかで、ハタリブックスの「座頭市映画手帖」が参考文献/協力としてクレジットされました(→)。って、直接はなんにもしていないんですけど。


【十一月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200811

カンカン稽古中に派手に転んで仙骨打撲。万事快調ってほどではないけれど、本厄の一年を無事にやりすごせるかと思いきや、こんなところに落とし穴があったとは。その後三日間寝込み、整骨院に通いつめる。このダサさが我が身を振り返る機会になったのかどうか、これまでの人生経緯と自己紹介などしてみました(→)。九日、鬼頭ブラス三度目の東京ツアー。江古田Buddyにて「鬼頭哲ブラスバンド ワンマンライヴ」(→)。十五日、テアトル新宿での特集上映「若山富三郎の軌跡×勝新太郎の軌跡」の初日に、若山騎一郎さん×鴈龍太郎さんのトークショウにて司会で出演(→)。企画制作舞台裏のオシゴトが常なハタリが舞台に上がるなんて! このおふたりの対談に居合わせらるという贅沢で面白い体験。同じく司会進行をつとめてくださった岸野雄一さんに助けられました。そして月初からあわててつくっていた「座頭市映画手帖 petit」が月末になんとか完成(→)。今夏の終わりに独立したデザイナー、yap!のゆかさん、スピーディで潔い仕事をありがとう。というわけで、勝新座頭市がふたたびハタリハウスに草鞋を脱ぎはじめました。「座頭市映画手帖 petit」ご希望の方はよろしくどうぞ。


【十二月】 →http://d.hatena.ne.jp/htr/200812

祝・ハタリブックス五周年。月初はひさびさに旅雑誌の出稼ぎ校正。旅モノの仕事はたのしいな。やっぱり早く「マドモアゼル旅かばん叢書」をつくりはじめなくちゃ、かわいらしくて役に立つような本にしたいなあと思いながら、手先はひたすら「座頭市映画手帖 petit」の印刷製本。出稼ぎ校正とカンカン稽古とバレエレッスンと肉体労働を併走させていた十二月の半ば、平岡正明さんからお電話。叱られるーと思いきや、御大は寛大であるからこそ御大であるわけで、トントトンと打ち合わせは進み、草鞋を脱いでいた勝新座頭市が本腰をいれてくつろぐことになった。来年、平岡さんと共著で「勝新座頭市本」を出す企画が発車しました。がんばります。二十六日、夏から打ち合わせを重ねつつ、先方都合で延び延びになっていたお仕事が待ちに待ったスタート。とある、かわいい二頭身キャラクターブログで、主人公になりきって原稿を書くという、ひじょうに女の子っぽいお仕事。「ハタリさんのはブログじゃなくて小説ですね」と言われたとおり、ストーリーを創作しています。これもまたなかなかおもしろい、かも。毎週金曜日に更新という、スパンの身近さも刺激的。まるまる休みにした晴れた日に、念願のさいたま「鉄道博物館」へ(→)。来年もいろんなところを旅して、いろんな線路を走って、いろんな景色に出会えますように。京王井の頭線も、中央線も、大糸線も、函館本線も、未踏の線路も、どこかどこでも、わたしを待つ景色がきっとあるはず。ボンボヤージュ、健全で健康ですばらしき日常を。


今年もミスハタリとハタリブックスにお付き合いのほど、ありがとうございました。ミスハタリの旅と日常とお仕事と余興と娯楽は、来年も懲りずにつづきます。よろしくどうぞ。

ミスハタリ拝