エリア・スレイマン『D.I.』(2002/パレスチナ)を観た。カンヌ映画祭で国際映画批評家賞(最優秀作品賞)/コンペ部門審査員賞を受賞したという、カンヌ初出品のパレスチナ映画。監督エリア・スレイマンは主演(?)もしていて、ただし一言も言葉を喋らない。さほど嬉しそうでもない無表情に五パーセントだけ笑みを浮かべている、そんな不思議な表情ゆえ「パレスチナキートン」といわれたりしているらしい。さて、映画はパレスチナを舞台に、日日繰り返される滑稽なエピソードがいくつか断片的に組み合わされ同時進行でつぎはぎされていく。スレイマンの父親が倒れたあたりから、映画はスレイマンと美女(マナル・ハーデル)の検問所の駐車場での「悲しき逢瀬」を中心とした無言劇が展開していく。最後まで頑なに喜劇でありつづけるということがこの映画の魅力だ。想像力があれば三メートル四方の牢に閉じ込められた捕虜だって自由になれる、そんな意味合いをこめた『D.I.』は「DIVINE INTERVENTION」の略。