文京の朝顔ほおづき市に行こうかと思っていたのに朝から鈍い天気でいまいち気持が盛りあがらない。掃除を済ませてから、鞄にピアニカを差して家を出た。新宿で今日が初日の豊田利晃ナイン・ソウルズ』を観る。二十歳から五十歳まで九人の男たちの青春映画。豊田映画は喰わずきらいで観たことがなかったので前作『青い春』や『ポルノスター』などと比べようもないが、登場人数が多いためか物語が散漫。「父と息子」というのが主軸といえるのだが、いまいち押しが弱いのは互いになぜ父(息子)を殺したかをうまく描いていないから。重要なシーンがすべてスローモーションになりわたしの腕はそのたびに鳥肌。説明過少のまま突き進むアヴァンタイトルの軽快な流れは素晴らしいのになぜ美的な思い込みに頼ってスローにしてしまうのか。dipの音楽はよかった。添え物程度の若手女優の芸のなさに憤慨。人気のカワイコちゃんよ、踊り子役するならちゃんと指先まで色気出して踊れ。それはそうと、とにもかくにもわたしの視線は芳雄に釘付け。上映後の舞台挨拶で生原田芳雄を目前に拝みすっかり両眼がハート模様。劇中の原田芳雄の役柄のぶっきらぼうなくせにどこかコミカルな親爺、なんだかこの人を知ってるなあと思ったらそれはうちの父親だった。いーやーだー、けっきょく娘というのは自分の父チャンが好きだってことなのかしら。

夜、渋谷一周デモ。宮益坂から六本木通り骨董通り青山通り表参道公園通りで渋谷駅。サウンドシステムを載せたトラックについて四時間近く歩いた。スピーカーから流れる音楽は、秘密博士は演歌を、レゲエがあいだに挟まり、ムードマンはちょっとおしゃれに、アイちゃんはやや懐かしい選曲で大盛り上がり。雑踏の中、おそるおそるピアニカを吹いてみた。あまりの賑やかさに返りがかき消されるので音が外れているのかどうかもわからなかったけれど、隣にいた女の子が「カワイー」と言ってくれたのでちょっと救われた。たくさんの若者が能天気な顔して歩いていた。こういうイベントはもっとあってもいいとおもう。