今日はペドロ・アルモドバルトーク・トゥ・ハー』(2002/スペイン)を観た。感動したくてやってきたマダムにも、あるいはストーキングの無気味な話を苦笑いしにきた人にも、双方とも小首を傾げてしまいそうな映画。デデデデデデスコミュニケイションの美学! 昏々と眠り続けるヒロインを世話する男(ハビエル・カラマ)の穏やかな瞳とあごの無い輪郭に終始気味の悪さを感じつつ、纏まりすぎるほどに纏まった脚本に素直に感心する。生と死と性と愛の四面にははっきりとした境目が無く、神に祈るほどの信心も薄れ、見えない奇跡を乞うも乞わないもさほど違いが無いような現実。そのさなか、女たちは何も知らずに眠り、男たちは刑務所の接見所の厚いガラスに顔を寄せ合い深刻な気持で涙を流す。別に愛の感動作でもキワモノでもなく、ふつうによい映画だったと満足しました。赤い服を着た男と青い服を着た男が接見所で向かい合い、互いの顔がガラスに反射して自分自身と対面しているかのようなシーンが印象的。カエターノ・ヴェローゾの歌声やピナ・バウシュの手の動きも愉しめます。ピナ・バウシュは今秋にまた来日するそうね。