テレビが友達。不意のCS放送は偶然の出会いだ。黒澤明酔いどれ天使』(1948/東宝)。やくざ者の三船が結核に倒れ、その墓前で小暮実千代と志村喬が交わす会話。「あのひと、足を洗うって言ったのに。わたしの田舎で療養しようと誘ったのに…」「結局、やくざ者はやくざでしかないんだ」。そんな様子の会話。「わしだってあいつの心を変えられると思った。でもできなかった」。自分が相手を変えてやりたいというのはエゴか博愛か。いずれにせよ儚く消えてしまえば大した差違はない。

増村保造『親不孝通り』(1958/大映)。川口松太郎の原作を、実子の川口浩(のちの探検隊)が主演。野添ひとみを相手に、行き当たりバッタリこそ正しい男子の生き様であることを体現。軽薄さの紗を除けばそこには青春そのものが寝転がっている。夜更けに『続チャッカリ夫人とウッカリ夫人』。チャッカリさんは久慈あさみから轟夕起子にチェンジ。これによってややオットリ感が加わった。そして新キャラ「ガッカリさん」が登場。このシリーズで何がもっとも面白いかといえばタイトルだ。それと愉快なテーマソング。音符に書き出してひとり歌って歩きたい。タイトルバックのイラストもかわいい。

総武線に揺られて市川へ。りぶるにて、不破大輔さんと佐々木彩子さんのデュオ。前に観たときも思ったけれど、とてもすてきなガチンコ。渋さ知らズの演奏は、大人数の祭囃子もたのしいけれどミニな音楽の現場を観るのも同じくらいに面白い。ちゃんさんの声とからだつきが非常にうらやましいと思う。和気あいあいとした空間で音楽が生まれていく。終了前後に世間話。「座頭市映画手帖」を鞄から出したら、不破さんが「世界でいちばんすきな役者は勝新太郎!」と興奮し、しばし座頭市勝新談義が盛りあがった後、二冊も買っていただいた。「若いのにエライ!」と褒められ、そして「千円あげます、残りはお駄賃!」と言われた(が、釣りはちゃんとかえしました)。中野光座で四日から公演の「発見の会」は上杉清文さん作とのこと。観に行きますと約束。