『喜劇 女は男のふるさとヨ』からちょっといいことば。

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村枝ねえさんは、アンタにはおかしな踊りを才能があると言って褒めてくださいました。
「いいかい、ちゃんと基本を身に付けた上でコミカルに踊るんじゃなくっちゃゴマカシなのよ。ゴマカシはいつも手口が同じになるから、マンネリになるの。ちゃらんぽらんじゃお金は取れないのよー」

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緑魔子の脱ぎっぷりはいつも見事だ。『黒木太郎の愛と冒険』でも無駄にポローンと脱いでいた。ちゃんと支度すればじゅうぶんすぎるほどにキュートなのに、妖怪みたいな仕草で慈悲にあふれる眼差し、でも首から下はやっぱりハダカ、ってのがたまらない。数年前に水天宮の倉庫で第七病棟の舞台を見たときにもその印象は同じで(脱いではいません)、なんて無気味で可愛くて面白い女のひとなんだろうといっぺんに好きになったのだった。緑魔子演じる泣き顔の踊り娘星子が、雪降る夜の町で受験に失敗して死のうとしていた若者を慰めようとして自分のからだを与えて青姦してるところをオマワリに掴まえらてしまう、というくだりが『喜劇 女は男のふるさとヨ』のクライマックスでもあるのだけど、その行為をからだひとつしか持ち得ない女の悲しさと片付けるにはそのときの緑魔子はあまりに立派かつ真っ当な眼差しをしていたので、そうだ、この喜劇と銘打った映画はここで笑うべきなのだと不意と気づくのだった。

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「99嘘ついても肝心なとこひとつが本当ならいいけど、その肝心なとこで嘘つかれたんじゃあ、あとの99が本当でもあの子は我慢できないんだよ」(中村メイコの台詞より)