今週のハタリハウスビデオ鑑賞状況。三隅研次子連れ狼 三途の川の乳母車』(1972/東宝+勝プロ)は、足首手首とみれば斬り落さずにはいられないショーアップされた殺陣やボンドカー化した乳母車の装備の馬鹿馬鹿しさや映像を二重に重ねて妙に官能的に仕上られた(しかも長い)鮎川いづみとの床絡みや明石柳生の女衆の山田風太郎的な色気や岸田森のニヤリやもちろん若富拝一刀のズングリムックリなダンディズム…と、見どころだらけの勝プロ名作なわけだが、話に聞いていた通りに桜井英顕による音楽がすばらしくよかった。使っている楽器の数がやけに多くて、シタールなんかも鳴らしちゃう。ジャーン!ドカーン!とわかりやすいところで至極わかりやすく盛りあがるので耳と目のあいだをつなぐワクワク感に無駄な距離がない。対向車も見当たらない田舎の直線道路を時速百二十キロ超、助手席の窓を開ければババババババと勢いよく吹き込んでくる風、身を乗り出して逆風に向かって「ワハハハハハー!」と叫んでみればその声もすぐ後方に流れていっちゃうから返りも聞えず、うーわーほんときもちいいねーというからだと頭が直結している単純快感、って、こんなたとえでなにかを話そうとするから、途中で興味の向きが角を曲がって、こんなよく晴れた日は北海道の牛臭い道をドライヴしたいねーでもいいよ伊豆でもだってわたし免許も車もないから運転してくれるアナタにまかせるよーただねとにかくきもちよくいきたいよ、なんてことになるのだ。

そのほか、衛星テレビで「じゃがたら祭り クニナマシヱ」の番組を観たり、ローランド・カークのビデオを観たりしていたハタリハウスの一週間。耳に聴こえてくる音はといえば、アン・サリーの美しい唄声に「唄がうまい上に医者だなんて賢すぎてずるいなあ」といいながらベトナム飯を食べたり(ンまい!)、久々にみつけたルインズを大音量でかけながらベランダに種を蒔いたり、オーガスタス・パブロはくそーやっぱり男前だと悶絶したり、ロバート・ワイアットが家にあったはずなのにない!と憤慨したけどそもそも自分のものではなかったのだったと思い直して恥じ、同じように四人囃子はどこいった…と思ってまた思い直し、桑名晴子をリピートさせて浮かれた気分を南国に飛ばせていたら、XTCのケースの中身がロマンポルシェにすりかわっているのに今ごろ気づいてヘナヘナと畳の上に座り込んだりしています。