よく晴れた休日、銭湯不良少女の旅心は朝も早から疼きだす。午前八時の「ホリデー快速おくたま号」に乗り込んで奥多摩へ逃走。午前中いっぱい渓谷沿いの「奥多摩いなかみち」を三時間ほどハイキング。渓谷の吊り橋の真ん中で気を失いかけ、風景を眺める余裕もなく不安定な足取りで無心に渡る。大人になってこわいものが増えた。地震とか高所とか雷とか嘘とか借金とか、でも貧乏と馬鹿とはわりとうまくやっている。青梅街道にあがってバスに乗りさらに村営バスに乗り換えて県境をこえ山梨へ。大菩薩峠の手前に湧く「小菅の湯」が今日のメインイベント。ぬるくてやわらかい湯、あかるくてきれいな施設、五右衛門風呂から眺める森と青空、ふとんが敷かれた休憩室、マッサージチェア、大広間で食べるさほどうまくもないざる蕎麦。まったくもって理想的な立ち寄り湯環境。暗くなるまで長居して、ついに禁断の「貸し浴衣(黄色の半袖半ズボン)」をお揃いで着てしまったわたしとヨシミちゃんは「かえりたくない〜」「あたしここに住む〜」などとぬかしながらコーヒー牛乳を飲むのだった。二十人以上集まれば大広間貸切でカラオケ付き宴会が出来るとのこと。西方に極楽発見、またいけない遊びを覚えてしまいました。