金曜の午後三時、銀座メルサのインド屋で五つ星シェフが作るゆで玉子カレーという、豪勢なのか庶民派なのかわからないが美味いルーで大きなナンを平らげて、週末カレーマラソンが開幕。セロリニンニク玉ねぎを炒めてあれやこれやと用意して、土曜深夜に、玄関ドアに「歓迎 いらつしやい」と筆書きした紙を貼って客人三人をお出迎え。人参、茄子、オクラ、サツマイモ、パプリカ、舞茸、鶏肉を炒めた野菜カレーと、クスクスとパクチーごはん。ベトナムサラダ、茄子マリネ、おからサラダ、自家製ドライトマトルッコラ、ピクルス。以上が今回のおもてなし献立。愉快な酒盛りは翌日の昼近くまで続いた。床に倒れて寝ていると、「歓迎」をはがし忘れていたために不動産屋を歓迎してしまった。その数時間後、日曜日の夕暮れ、駅前まで娘さん二人を迎えにいってカレー舞台再演。こちらも同じメニューでワイワイ食べる。「路頭に迷ったらカレー屋になればいいよ」と言われるのはとても嬉しい。まったく、そんなにわたしはカレーが好きか。

久々に映画の話。これから『ロイドの要心無用』を観る。先週のY氏の映画史講義のテーマはスラップスティック・コメディで、マック・セネットや、ローレル&ハーディのパイ投げや、キートンの『セブンチャンス』の追っかけ場面やビル登りのロイドのメイキングなどのビデオを観ることができた。大胆な身体性と綿密な計算と大真面目な情熱が、愉快な映画をたくさん作った。そのことに感動したトリュフォーゴダール喜劇王へたくさんの無邪気なラブレターを宛てた。『ウィークエンド』の長回し渋滞は『極楽交通渋滞』のパロディだし、『突然炎のごとく』のオープニングのジュールとジムの軽妙なコンビネーションも極楽コンビを真似ているし、なにより『夜霧の恋人たち』の靴屋のシーンで画面に数秒だけ登場するふたりの子供がローレル&ハーディのお面をかぶっていることが本篇の何に役立っているというのだ。まったくもう、うれしいから今夜は笑い顔で眠ることにする。