朝から美女三昧。大映のオムニバス映画『女経』を観ながら朝食。美しくて金にがめつい女三人のすこぶる健全な映画。バアに勤めて客を誘惑し金を巻き上げるだけ巻き上げて絶対にヤらせない若尾文子が、稼ぎのほとんどを株に投資しては「あたしお金大好きよ。だって男と違ってお金は裏切らないんですもん」とうそぶくのに拍手。美女が言うとなんでも説得力が増すので美しいっていいことだなあと思います。他二篇は山本富士子京マチ子が主演。いかしたタイトルロゴとエンドロールのデザインはアンクルトリス柳原良平。あなたが多忙でまとめて九十分も時間を用意出来ないのなら、三度にわけてたくましい美女と騙されてあげる話のわかる男たちを日替わりで楽しめばいい。

夕方からは下北沢で川島雄三映画祭。カツサンドにかじりつく客多数の映画館で観るは『喜劇 とんかつ一代』。豚の横顔を映した直後に画面がロース切り身にかわるという爽やかな悪趣味加減と、森繁久彌加東大介フランキー堺三木のり平…と、社長シリーズから小林桂樹を引いて山茶花究を足した面子揃っての愉快な映画。パタパタと森繁を追いかけまわす淡島千景もかわいいけれど、芸者「林檎ちゃん」役の水谷良重のやわらかそうな愛らしさがまたたまらない。「とんかつがー食えなくなったら死んでっしまいったいー」。せまい映画館のなかは笑いとよだれでいっぱいだ。大団円を迎えて幕が閉じ、油のにおいが恋しくなったら外はすっかり夏の夕暮れだった。うろ覚えのとんかつソングを歌いながら、夜の待ち合わせにふらふらと坂をのぼる。