htr2004-07-29

007/カジノ・ロワイヤル』(1967/英)はどうしてこんなに素敵な映画なのだろう。バカラック・メロディのせい、ウルスラ・アンドレスら美人揃いのせい、馬鹿馬鹿しく愉快な仕掛けのせい、誠実で柔軟な変態役者ピーター・セラーズのせい、デイヴィッド・ニーヴンの立派なひげのせい、ウディ・アレンのせこくて愛しい姿のせい、いや、もうなんだかわからないけれど、この映画に対して抱く感情は「とにかく羨ましい」に尽きるのだった。あちら側に仲間入りしたい(でもきっといろんな面倒を背負わされて厄介な目に遭うんだろうな)という気持ちになって背中のあたりがモゾモゾしてくる。しかも今回はテレビ放映時の吹替版のビデオで観ることができた。わたしは吹替マニアでも原理主義者でもないけれど、やはり深夜枠に放送されていたような吹替版映画は吹替で観たい。映画そのものの魅力に加えて、芸達者な吹替声がふしぎな居心地のよさを加えるからすきだ。子供時分のこと、夜中に目がさめて子供部屋からトイレにいく途中、酒に酔った父親がすでに半分以上眠りながら座椅子にもたれているところに邪魔して、一緒に流し観て「この女の人のまぶた黒すぎ」などとまったく筋と関係ないことを気にしながら、わかったようなわからないようなつまりどうでもいい間延びした気分になって再び二段ベッドに戻って眠った、あの真夜中のゆるい時間を感じられるのでうれしい。そんなこんなで真夜中に目がさえてしまったような気分で「キャーウルスラかわいー」「オーソン・ウェルズ出たッ」「このスローモーションはすごいねー」などと興奮。映画のたのしみはいろいろあって飽きることがない、もちろん飽きるはずなんてありゃしないのだ。


吹替音声を収録した『ピンク・パンサー』DVDボックスも近日発売するし、ソウル・バスによるエンディング・アニメーションもすばらしいあの大好きな映画『80日間世界一周』のDVDも出るという。あちら側にいきたいと願ってしまう映画がみんな手招きしてわたしを呼んでいる。夜が更けたからといってよだれ垂らしてあさはかな夢をみている場合ではないよ。