押入れの整理をしていたらずいぶん前の映画芸術かなにやらの記事コピーが出てきた。読まずにしまいこんでいたのだ(くれたひとはえらそうな顔をしていたけど、あいつも、きっと読んでいなかったにちがいない)。ちょうど『秋津温泉』を観たあとだったので面白いかなと思って読んでみた。吉田喜重の『エロス+虐殺』を巡るインタヴュー。日蔭茶屋事件をとりあげたことで起きた「プライバシー問題」のいきさつ。そもそもは、大正時代、思想と実際を両立できるひとがいたころの出来事。男と女と女と女の話、それはとてもスキャンダラスなお囃子かもしれないけど、吉田喜重はそこに現れた女の本能に驚嘆したから敬意を表してこの映画を作ったのだ、と言っている。男たちが考え邁進するスピードを、女たちはよってたかって崩すし邪魔をするし加速もさせる。その複雑な恋は、「思想」と「実際」の二次曲線の交点であったのだろうなと思うのはわたしが娘で子供だからだろうか。いやそうじゃないね、きっと。女ってのは男たちの目論みに思わぬ横槍を入れて昇華させる能力をもっている。ただそれが昇華に繋がるのは非常に稀で大抵はくだらない茶番に終わるのがオチだから、男のひとは「やだね、女ってのは面倒だなあ」と思うのだろうし、なにせ前例が多すぎるから無理もない。


竹中労『断影 大杉栄』(ちくま文庫)を読んでいます。そして、吉田喜重『エロス+虐殺』(現代映画社/1970)を観た。渋谷ツタヤにはビデオ無し、新宿ツタヤには上巻のみ、恵比寿ツタヤには上下巻あり。でも恵比寿の上下巻はまだわたしの家にあるから今駆けつけても無駄ですよ。