スカートの裾をたくし上げてホームを爆走したにもかかわらず、湘南新宿ラインは一分の差で出発したあとだった。平謝りから始まった土曜日。逗子駅前の定食屋で甲子園テレビ中継を眺めながら海鮮丼を食べ、満腹になったところで葉山の一色海岸へ。日傘をさして波打ち際で足首だけ波にさらしたり、岩場でヤドカリと戯れる貴婦人気取りの午後。一色海岸はコンパクトでゆるくておだやかな海水浴場だ。その浜に建つすてきな海小屋で、夕暮れ時から渋さ知らズ投げ銭ライヴがスタート。ステージと客席の区切りのない空間にオーケストラがみっちり詰め込まれて演奏。ご近所の葉山御用邸や近隣住民から苦情がきたらその時点で演奏終了というスリリングな状況のなかで、「ナーダム」や「サリー」や「DADADA」を聴いた。たったいま海から打ち上げられたトドのようなニュージーランド人の水滴以外はとてもゆかいで、終始笑って揺れて踊って唄った。結婚式の二次会みたいな雰囲気のおしゃもじジャンケン大会も催され、きもちよーくゆるーくゆかいなライヴだった。途中でオシッコに抜け出て戻ってきたら、楽隊は浜辺波打ち際で演奏中。砂の上で跳ね続けていたらお気に入りのサンダルが壊れてしまったので裸足でかけていく。膝まで海に浸かってワーイワーイとはしゃいでいたらパンツまですっかり濡れてしまった。つい数時間前の貴婦人の夏はいったい何処に、そんなこたぁしらねェなあ、だって音のある夕暮れがね、とてもきもちよかったんですもの。


あとすこし演奏が長引いたら海にダイブしていたな着替えもないのに向こう見ずなことするところだったあぶないところだった(渡部さんや不破さんはすでに頭の先まで水のなかだった)と、我に返ると鞄のなかから携帯電話が消えていた。波打ち際をさらってみるもすでに行方知れズ。友人の電話から探ってみてもお留守番サービスがそっけなく答えるばかり。自分の馬鹿さ加減によよよと崩れ落ちながらも、気を取り直して呑む呑む呑む。焼鳥を食べる。サンドイッチを食べる。タイカレーも食べる。家ではずん胴いっぱいのサンデーカレーが留守番しているというのに外の子に浮気。浮気が本気でとても美味いのだ。久々の潮騒に、はしゃいでいろんなものをなくしましたが、財布とアパートの鍵と本人は無事なのでまだまだ自己反省には至りません。