本場仕込みのチーズフォンデュで更けた夜は天変地異で朝を迎え、昨日のつづきではじまる長い一日。軍手をはめて尻に手ぬぐいをさして見様見真似で動いているうちに夕方になった。夜、渋さ知らズオーケストラのO-Eastライヴ。ナーダムの途中で会場に潜り込んだら、寝不足の頭がくらくらした。会場のうしろからじっと舞台全景を眺める。どこに焦点を合わせたらよいものかいつも迷うのがオーケストラ規模のライヴの面白さだ。ピットインやマンダラセカンド、なってるハウスに市川りぶるなど、天井の低い空間から事故のように新たな音楽が生まれてくる瞬間を目撃する悦びはこのヤンチャな場ではわかりにくいかもしれないけれど、しらけたケのあとの豪快なハレに飛び込んでささやかな人生を棒にふる快楽は癖になる。人生どころか調子にのって旗まで振って闊歩しようとしているわたしは傍から見たらどれほどゆかいな顔をしているものかしら。


今月末に新刊で発売になる平岡正明さんの『大落語』(法政大学出版)の下巻、勝新のくだりでハタリブックスの『座頭市映画手帖』についてもすこし言及していただいているそうです。と、先日いただいたお年賀で知り、わたしはハガキ相手にドヒャー!と腰を抜かした。座頭市と真正面から四つに組んで映画全二十六作を何度も観返し青春を捧げた夏と秋のおかげで、今、市っつあんが呼び込んだゆかいな風があちこちで吹いている。最大級のアイドルである市っつあんが小娘にくれた物事はたくさんあって、ああ、愛に正解などあってなるものかと思いつつも座頭市に惚れた自分を自慢に思う。願わくばわたしも市っつあんのマドンナになりたかった。ポジションとしては水谷良重小川真由美あたりの色艶と甲斐性のある飯盛女郎希望。坪内ミキ子藤村志保の生娘役はもう無理ね。