市川りぶるで低音環境。渋さ知らズ周辺人脈図のなかで、不破さんのベースの次にわたしがよく追っかけているのが高岡さんのチューバだ。大阪東京富山山梨そのほかあらゆる場所へ、大きくて重たいチューバを下げて旅をしているチューバ吹きの高岡さんは、いつでも面白い音をたくさん鳴らす。もちろんチューバならではの頼もしい低音もあるけれど、吹くだけでは飽き足らず吸って音を出し、二重に音を絡ませたりホーミーみたいな響きを出したり、唇を離したかと思えば指先や手のひらで管を弾いたり叩いたりする。引き出しが多い、というよりも、引出しがないなら作ればいいじゃん、という大工精神。コントラバスとチューバのデュオはきっとあなたが想像しているよりもとても饒舌で賑やかでそして暴力的だ。りぶるのブドウジュースをのみながら、かごの中のポップコーンが踊り出すのをみていた。ドアの外はいまだ冬の名残が胡座をかいているというのに、演奏するふたりは真夏みたいに汗をかいている。顔なじみの客ばかりでこの宴を独占してしまってほんとうに申し訳ない。演奏が終わると、壁側の長椅子のうえでは、おじさんがふたり酔いつぶれて横になっていた。市川駅から総武線快速のち横須賀線の逗子行き最終電車に乗って、海辺の行き先に思いをはせながら東京駅で下車して月曜日が終了。旅心と理性の勝負は後者優勢。わたしにはまだまだ自由が足らない。引出しがないなら作ればいい、ただそれだけのことだっていうのにね。