大嫌いな三月が過ぎ、桜と花粉と四月馬鹿を迎えて、相変わらずの身軽さで空旅演習札幌まで。せまい座席に不機嫌な顔で眠り、旅人気取りで昔なじみの町に入る。猫をいじったり廻る寿司をいただくのは明日の予定にして、本日は完全休息日。狸小路を抜けたところにある「十一月」という店で友人がのんでいたワインをすこしいただいてご機嫌になった。高校時代に何時間も飽きずにキャアキャアお喋りしつづけていた大通公園ミスタードーナッツに寄ってから豊平川沿いのホテルに戻る。この幅広い川がとても好きだった。橋を三つほど川上にわたしたちの学校があって、弁当を食べたり午後の授業を抜けておしゃべりしたり野球や花火をしたりデートの真似事をしたのもこの河川敷でのこと。まだ溶け残る汚れた雪が川沿いを無彩色の風景に仕立て、ひさしぶりに見たその姿はまるで知らない町のようだった。こうやってわたしは旅人になっていく。きちんとプレスしたシーツのそっけない肌触りがすきだ。長細い風呂で寝そべってぼんやりできるのがすきだ。ふと、自分がいまここにこの姿でいることがどうしてか突然不思議に思えた。この際、すべて縁と因果と成行きで片付けることにしています。