名古屋 シャチホコと渋さ知らズの旅

htr2006-05-04

思いつきで名古屋まで遠足。札幌からあそびにきた妹に、シャチホコ渋さ知らズを見せる旅。

名古屋クアトロにて渋さ知らズ。昨年のヨーロッパーツアーの続きだと聞けば、駆けつけないわけにはいかないだろう。なるほどこれはヨーロッパツアーの続きだと再確認したのは、ゼロ泊バスツアーという行程。バス内で撮られた写真を見るかぎり、後部座席の豪勢な宴会も、座席組み合わせの具合も、ヨーロッパ旅のままだった。渋滞に巻き込まれてバス動かず、なんて話、ウクライナ−ロシア間の陸路国境でもよく似たことがありました。そんな笑い話のようでいて過酷な移動を経た後のライヴは、往々にして、疲労と呑みすぎと睡眠不足と「やけくそ」が炸裂して、予想以上に面白いステージになることがある。ほんの数日前、渋谷クアトロで同じく渋さ知らズのオーケストラライヴを観たのだけれど、ほぼ同じ曲目でありながら、あの日の終演後はまったく感想が浮かばなかった。フロア中央で首タオルとTシャツで暴れている子たちを見て感心するばかりで、この煮え切らなさは自分の体調不良のせいなのかなと反省し、何曲か見送ってしまった。演奏や踊りが面白くなかったわけではない。何度観ても同じライヴがないのは渋さ知らズであるし、このバンドの心臓がライヴにあるという所以でもある。それが、どうだ、名古屋での演奏は「やけくそ」がバチーンとはじけて実にエネルギッシュでバカバカしいライヴだった。素晴らしかった。

ここ二年ほど、思い返せば、飯田の天幕渋さと、同年十月一日のピットイン、この日はピアノのスガダイローさんやドラムの磯部潤さんが初参加、チューバの高岡大祐さんが初めてブロウベースで乗り切ったライヴだったのだけれど、あの日以来、建設的な「やけくそ」を観て感動することは、渋さ知らズに関してはぐんと少なくなった。もちろんそれ以後も遠くからそしてごく近くで、さまざまな規模編成内容の演奏を観てきた。私見で言うならば、昨年のヨーロッパツアーでのスロヴェニアはリュブリアナでの「Dorga Godba Festival」でのライヴ、これは最新DVDの特典映像にもなっていたかな、演奏直前のバックステージに満ちていた起爆前の落ち着かなさと、ステージ最前でカメラを構えながら覚えた間違いのない興奮。それとやや似たものが、名古屋クアトロのフロアに渦巻いていた。もちろんすべてはまるで別の出来事であり、二度と同じような奇跡も必然なんて起きやしないのだけれども。

わたしが渋さ知らズに恋をしたのは数年前のこと、それから幾度こんな気持ちになっただろう。恋人への点は甘くなるのが常な反面、恋人だからこそやきたくなるおせっかいもある。また、その中に入ってしまうと肝心なものが見えなくなってしまうことも多々あることだけど、久しぶりに面白い「渋さ知らズ」を観た、と思った。その夜、わたしの中でずっと着地点を見つけられずにいたあのヨーロッパ旅について、ひとつの回答が出たのだ。一年がかかった、まったくその通りだった。