クレバーでヤンチャなベルジャン

htr2006-11-15

渋さ知らズと、ベルギーから来日中のFES(Flat Earth Society)のライヴを観にO-Eastへ。前半は渋さ知らズのライヴ。大きな舞台にしては思いのほかややコンパクトな編成。それでもダンサー含めて三十人はいたはずだ。同時多発的にさまざまなシーンがあったけれども、今日はFESのことを忘れずに残しておこう。

管楽器、鍵盤がピアノとアコーディオンとキーボード、弦とドラムという中編成。シャツにネクタイ姿の男性や、唯一の女性メンバーが黒いドレス姿でチューバを抱えていたりして、クールな雰囲気ではじまった。面白い違和感を感じたのが、演奏中にやたらとメンバーがステージ上を移動していること。誰かのソロがはじまると他パートのメンバーは立ち位置から外れて端から見ている。曲が展開していくとまた戻ってきて演奏に加わる。

端正な音の重なり合いで一曲目が始まり、ずいぶんと理知的なバンドなのかなと思っていたら徐々に悪ふざけの分量が増えていった。中盤、ホーン隊がマイクから外れて生音演奏。どの楽器も音の初速が速い。無駄な間や緩みがなく、計算どおりに音が重なり合う譜面の音楽だ。非常にクレバーでクールなアヴァンギャルド・ポップ・ミュージック。終盤のアゲアゲなリズミックな展開にはすこしあざとい印象もあったけれども、とてもよく計算されたキャッチーな音楽だった。

コンダクトを担うバンドマスタークラリネット奏者。その隣で吹いていたもうひとりのクラリネット奏者は、途中でバスクラに持ち替え、マリンバを叩き、最後にはマイクを握ってフロントで熱唱していた。アコーディオン奏者は奇妙なボイスパフォーマーでもあり、ピアニストは芝居じみたアクションをし、トロンボーンやトランペットはイヤミにならない程度の職人技を披露。チューバの女性が刻む音が計算高くて素晴らしかった。彼らが『007』の音楽を担当したら面白いことになりそうだなあなんて想像しながら拍手した。今のジェームズ・ボンドじゃないよ、ロジャー・ムーアのイメージだ。

Flat Earth Society http://www.fes.be/