オケ鑑賞4連投

Orquesta Nudge! Nudge!

ミスハタリがおくるのんべんだらりな毎日はせわしなさとは無縁なのですが、それでも駆け足でやってくる出来事にやや息が弾むことはあります。ギュウギュウに詰められたソーセージみたいな二月後半、観た「オーケストラ」は四舞台。

二月十八日、昨夜会い逃したナジャたちロシアご一行を迎えに新宿のホテルへ。「ハタリが運転するの?」「まさかあ、わたし運転免許も車ももってないっての、みんなでトーキョーの電車に乗るのよ」。東京駅から京葉線に乗り換えて舞浜へ。ディズニーのイクスピアリにあるレストランで渋さ知らズオーケストラのライヴ。DOMのディレクターとして渋さ知らズのロシアツアーのコーディネイトの仕事を堅実にこなしていた彼女は、きっといろいろな荷物を背負い込んでいただろうに、ステージから一音目が鳴り響いたとたんに一番の観客に変身してフロアで踊り狂う。そのスイッチングは見事だといつも思う。今夜のわたしの仕事は、ナジャと一緒に踊ることだ。

二月二十日、吉祥寺スターパインカフェでまた渋さ知らズオーケストラのライヴ。「股旅」で、ロシアの風景やDOMがスクリーンに映ってるよと指差すと、ナジャもナスチャも大喜び。ライヴ自体はタイトだったような間延びしていたような奇妙な印象。終演後にロシアみやげのひどく辛くてうまいウォッカをすこし舐め、近所の中華料理屋でロシア勢と宴会。そういえばモスクワの夜に、同じように大きなテーブルを囲んで日本人とロシア人がごっちゃごちゃになってごはんを食べたことがあった。みんなでナジャに紹興酒を進めたら、「わたしはアルコール度数をとちゅうで下げることはしないのよーん」とのこと。ウオッカを飲んだあとには紹興酒も焼酎も弱すぎるのだそうです。新宿行きの車をお見送りしてから、さらにすこしだけ呑んで帰宅。

二月二十一日、すみだトリフォニーホール関西フィルハーモニー管弦楽団のコンサート。鬼頭ブラスなどでお付き合いしているチューバ奏者の吉野さんがオーケストラでまじめに吹いている姿を観にいく。ショスタコーヴィチの五番という派手目な演目を、煽りに煽りながら振る指揮者と、アクロバティックに吹き弾き叩くオーケストラ。舞台の上は運動会のようだった。

二月二十二日、浅草アサヒ・アートスクエアでオルケスタ・ナッジ!ナッジ!のライヴ。会場に入ってまず仰天。フラットなフロアの中央に、九人分のパーカッション類が円形にセッティングされている。タイコやベル、タンバリン、ホース……見たことがあるような打楽器類だけではなく、枯葉の枝や弓、よくわからない器具のようなものも床に転がっている。開演前にそれぞれの奏者のセットを見回しているだけでも面白い。セットをぐるりと囲むように客席が作られているのだけれども、当然のはなし、どこに座るかで音の聴こえ方がまったくかわったくるのだ。前半はタイコ隊の後ろの席に座ってみる。後半は音階がある鍵盤打楽器とスティールパンの背後に座る。打楽器演奏のほかにボイスも入り乱れ、全体的に民俗音楽的なポリリズムが支配していたライヴ。ミニマルなダンスミュージックを期待していた面はやや裏切られたものの、次々と繰り出される「計算された」リズムは、ときに不整合、ときに情熱的に重なりながら展開し、音と音の隙間の無音状態までも身体に入り込んでくるようだった。