渋さ知らズ沖縄旅 その3

大島保克&オルケスタ・ボレ

二月二十七日、本日も大胆なまでの快晴。陽気というよりもこれは暑気だ。九台ほどのレンタカーに荷物を積み込んで南へ出発。昨日那覇レコード店で買ったばかりの大島保克&オルケスタ・ボレ『今どぅ別り』をカーステレオで流しながら、海岸線をすいすいと走る。ちょうど安座真港に着いたとき、車のなかでは「ジントヨーワルツ」がかかっていて、到着したのに、みんな車から降りずに聴き入ってしまっていた。音楽の大らかでやさしい肌触りにやっぱりちょっと泣いた。

今どぅ別り

今どぅ別り


そこに不破さんから電話連絡が入り、「船まで時間もあるし斎場御嶽へ行こうよー」との誘い。全車が集ってわいわいと観光タイム。以前、久高島に渡ろうとしたときもこの斎場御嶽に寄った。二度目とはいえ、やはりここはまた来てみたかった場所。大人たちはちょっとした坂道にもひいこら息を荒らしながら登り、拝所の岩や木々が丸く囲んで作られた窓から久高島を望む眺望に歓声をあげた。

 
  

安座真港から高速船で久高島に渡ろうとするも、荷物、持込みの楽器類、レンタルのドラムセットとアンプなど、その多さは尋常ではない。もちろん定期船なので他の乗客だっている。渋さ知らズ隊は二班に分かれて乗り込むことになった。「食材は頼んだ!」、ガッテン承知の介! 渋さ知らズの旅では食材の確保がいちばんに優先されるのだ。自炊用のネギやら大根やら多量の肉やらを持ち込んで船に乗る。久高島までは約十五分。あっという間なのだけれども、この高速船が実に「高速」で飛ばすので面白い。船尾でしぶきを浴びながら海の景色を堪能。グラングランに揺れて、まるでひとつのアトラクションのようだった(三年前はたしかフェリーで渡ったのでここまで揺れなかった気がする)。

 

久高島はやっぱりすてきな島。会場兼宿泊所として二日間お世話になるのは集落の端にある「交流館」。マチネ公演まで時間がないのでまず舞台を作る作業から。会場は小さめの体育館のような「ホール」。ゴザを敷いたり畳を運んだり椅子を並べたり幕を巻いたり。そのあいだに海に行ったひともいたみたいだけれども、それは後の愉しみにしてバタバタと準備。外では青い空の下、洗濯された白いシーツがはたはたと揺れていた。あっという間に午後二時になってマチネ開演。島のみなさん、那覇や遠方からいらしたお客さま、仲間、家族、あたたかい空気のなかでやいのやいのと演奏。ゴザ敷きの客席のなかをダンサーが歩き回ったりして、なんだかちょっとなつかしい感じの公演。ご来場ありがとうございました。終演後に炊き出しのカレーライス。ごちそうさまでした。

夕方には近くの浜辺へ。波打ち際で遊んでいたら、やはり当然ながらジーンズの裾をぬらしてしまう。ギャアギャア騒ぎながら後ろを見ると、トロンボーンのヤスさんなんてすでに太ももまで海中に浸かっていた。期待どおりのひとだなあ。しばし遊んだのち、ソワレ準備のために会場に戻る。二月だというのに海に入り、すでに風呂上りのような姿のメンバーが数人いた。舞台監督の安部田さんだとか、当然ですね。

 
 

ソワレ公演はさらにアットホームな雰囲気に。島の子どもたちがたくさん観に来てくれていたこともあり、「ライヴ」と「ワークショップ」と「宴会」と「学芸会」が全て混ざったような楽しい演奏会になった。目の前でくるくる回ってみせると、はじめはギョッとしていた子どもたちが一緒になってまわり出すのが面白かった。「はじめて見るなんだかよくわからないもの」に対して興味を持ち、こころを開くようになり、自分から飛び込んでくるまでの一連の流れを目の当たりにできて面白かった。終演後に島の中学校の先生をしているというおねえさんに呼びとめられ、「あれはなにを表現していたんですか?」と訊かれてすこしお話をした。お客さんはただただ騒いでくれていたのではなく、新しい視点と出会いながらこの音楽を観てくれていたのかなあと、なんだか興味深く感じた夜だったのでした。

久高島 http://www.kudakajima.jp/