五月の風景4 果敢なるエノケン

五月十四日、月曜日、晴れ。

早起きして、友人に長々とメールを書いていたら、送信した直後に彼女から電話が鳴った。「早いね、もうメール読んだの?」「えっ、送ってくれていたの?」。こういう奇妙なシンクロが起きるのはとてもうれしい。晴天の下を張り切って自転車で出かけて、足元は近所仕様、つまり裸足にクロックス。まだ五月だというのにすっかり日に焼けてしまった足の甲。久しぶりに井の頭公園を散歩。

一旦夕方に帰宅、着替えてから、また自転車。荻窪駅から電車に乗って目白の学習院大学へ。山田宏一さんの映画誌講義、今週は「榎本健一エノケン」。喜劇王エノケンガテン芸の道を映像でたどる。カラダを張ったドタバタ喜劇、アメリカのレヴュー(まさしく先週観た、バスビー・バークレイの華やかなレヴューや、エディ・カンターが唄った曲を『エノケンの青春酔虎伝』では日本語でカヴァー!)から、エノケン流の舞台を作り出していく。『エノケン近藤勇』のなかで、「ボレロ」に合わせて女中がお膳を運んだり、「ピーナッツ・ベンダー」の流れる中での殺陣など、実に洗練されたおしゃれなアイディアばかり。脱疽のために脚を切断したのちも、晩年まで舞台に上がり続けたエノケンの、芸への執着心というか、自分が「エノケン」そのものであるという意志に圧倒された。果敢なる、という言葉はここでもあてはまるのだ。

夜、高円寺にて舞踏家さんたちの稽古を、床でストレッチをしながら見学。階段から落ちて以来、なんだかまた身体が閉じてしまったかんじ。帰宅後は東京中低域のロンドンツアーDVDを鑑賞。水谷さんの声のくぐもり方はとても素敵でうらやましい。