映画

倉地久美夫ドキュメンタリー映画『庭にお願い』

ヨコハマ国際映画祭でプレミア上映される『庭にお願い』を観に、東京藝術大学大学院映像研究科馬車道校舎へ。旧富士銀行の古い建物をリノベーションしていて、海側にある旧日本郵船倉庫を利用したBankARTと同じように、天井が高くて柱が太くてすこし不便で格…

マイ・ベスト・森繁

俳優の森繁久彌さんが亡くなった、九十六歳。近年スクリーンで見かけなくなっても、森繁という役者がこの現在にいるということに、いつもわたしたちは安心していた。それは一度でも、スクリーンの森繁に惚れてしまった映画ファンなら、それ以来ずっとそんな…

『ホルテンさんのはじめての冒険』DVD特典映像に出演しました

以前紹介した映画『ホルテンさんのはじめての冒険』(→ ☆2009/04/08の日記)がDVDになりました。そのDVD特典映像「ベルゲン急行の魅力」で、世界中の鉄道を写真におさめているフォトジャーナリスト櫻井寛さんによる解説に、なぜか、わたくしハタリが聞き手と…

夏の鎌倉、センチメンタル寅次郎

雨が上がったら鎌倉だ、と出かけてきました。 「R OLD FURNITURE」や「うつわ祥見」をのぞきたいなだとか、鎌倉市農協連即売所で鎌倉野菜を買うのだなど、いろいろ欲望を抱えつつ、今回のいちばんの目あては鳩サブレーでおなじみの豊島屋本店。本店限定グッ…

時刻表はフィンランドを目指す 『ハンネス、列車の旅』

五月の金沢(→ ☆旅日記を書きました)で、あうん堂のご主人ほんださんとやっぱり鉄道に関するおしゃべりをしていて、「この映画知ってます?」と見せていただいたDVD。『逃走特急 インターシティ・エキスプレス』? ドイツからフィンランドに向かって国際列…

ベルゲン急行と『ホルテンさんのはじめての冒険』

ベント・ハーメル監督『ホルテンさんのはじめての冒険』(2007/ノルウェー)を観た。口数少ない紳士ホルテンさんは、首都オスロ〜ベルゲン間を結ぶノルウェー鉄道「ベルゲン急行」の運転士。「実直なホルテンさんの、はじめての遅刻」というハプニングから…

無頼兄弟の侠宴〜特集上映「若山富三郎×勝新太郎の軌跡」

コーヒーショップで待ち合わせていた方は遅刻し、訪問先の担当の方は会議が長引いていて、自分のメモ書きが間違えていたんじゃないかと不安になった午後四時。忙しそうですねと声をかけると「そうねバタバタとね。そっちも忙しい?」と切り返されて、ウグッ…

阪東妻三郎×清水靖晃 『雄呂血』

原宿駅の裏手の「杜」に入るのははじめて。すっかり空が暗くなった暮れ六つ、東京国際映画祭の提携企画として行われる「OROCHI!! 〜神宮の杜〜」というイベントを観に、明治神宮内にある神宮会館ホールへ。無声映画『雄呂血』(二川文太郎監督/1925年)を、…

おぼつかない日/音楽家が解読する映画音楽 5夜

午前六時半に飛び起きて、いちもくさんに洗濯機をまわし、そのままやや冷たいシャワーを浴びてオカッパ頭を洗うと、右中指のつめがひび入っていた。キャッと水から飛び出て、台所でかたゆでの玉子をつぶし、玉ねぎを刻み、てりやきソースの王様ぶりに感心し…

井口奈己『人のセックスを笑うな』の「時間」

書きそこねていたのだけれども、実は三月二日の土曜日に、シネセゾン渋谷にて行なわれた「『人のセックスを笑うな』音楽の夕べ」にお招きいただき、ノコノコとあそびに行ってきました。HAKASE-SUNと武田カオリさんによる主題歌「ANGEL」、MariMariが唄う「い…

続・『人のセックスを笑うな』プログラム

映画、『人のセックスを笑うな』のプログラム実物が手元に届きました。読みどころ満載かつ写真もたっぷり。 井口監督の映画作りに欠かせない重要人物のひとり、スクリプターの佐野久仁子さんの日記でもプログラムについてご紹介されています。佐野さんは白魔…

井口奈己『人のセックスを笑うな』プログラム

いよいよ本日より、井口奈己監督『人のセックスを笑うな』がシネセゾン渋谷にて公開。九月に内覧試写で観せていただいてから数ヶ月、ああ、ずうっとこの幸福な映画についておしゃべりしたかったんだ! これから渋谷をはじめ、北から南までいろいろな町の映画…

『愛のお荷物』の時代

その題名からしてずっと観たいと願っていた、川島雄三監督『愛のお荷物』(1955/日活)。特集上映などでずっと観逃してきたのだけれども、幸いDVD化していたので、正月気分の名残で床に転がって観た。「戦後、日本の人口は増えすぎてしまった、受胎調節を促…

アステア、キートン、ルノアール 三様の踊るハッピー

東京ですごすお正月、用意した映画は三本。フレッド・アステア主演のチャールズ・ウォーター監督『イースター・パレード』(1948/米)。これまで山田宏一さんの講義で『踊らん哉』、『スイング・タイム(有頂天時代)』などで、アステアの華麗なタップダン…

マキノ雅弘『映画渡世』とマキノイヤー

待つことがすべてだったある深夜、あまりの手持ちぶさたに本を開いたら止まらなくなった。マキノ雅弘『マキノ雅弘自伝 映画渡世』(平凡社)。父マキノ省三が京都で活動写真を手がけるようになった、日本の「カツドウ」創世記、「父の活動写真と共に私が生れ…

洋菓子のクドウと『夜を巻き戻せ』

これもじつは十二月一日のハナシ。有楽町から京橋まで歩く。その途中、銀座一丁目の「洋菓子のクドウ」に寄る。午後七時の閉店間際、ショーケースに残っていたシュークリームを自分のおやつにするのだ。この店構えとパッケージも含めてクドウのファンなのだ…

植草甚一/マイ・フェイヴァリット・シングス

うっかりしていたのだ! 「植草甚一/マイ・フェイヴァリット・シングス」展が、明日で終わるんだってこと! 仕事をしたりフェルトを縫ったりドーナッツを食べたりしているあいだに、季節はすっかり冬を迎え、空は青く、やせがまんのジャケットではすっかり…

Y氏の月曜映画誌 サイレント・クラウンの栄光と憂鬱

大学生の夏休みが終わり、何度か月曜日を逃し、ひさしぶりに学習院大学へ。月曜日の午後六時から、大学西二号館の五〇六号教室で、山田宏一さんが映画誌の一般公開講義を行なっているのだ。数年前、青山学院大学の学生向けの授業(そのときは月曜日の午前中…

秋日和

東京の九月の終わりは二日つづけて雨が降り、半袖で家を出たはずが帰りみちには長袖を着ているというあんばいとなった。日よう日の夜、渋谷まで映画を観にいこうと考えていたけれど、路線変更。秋だなあ、秋なのだなあ、とつぶやいて、小津安二郎監督の『秋…

喜劇 とんかつ一代

午後六時半、ねずみ色のお父さんでごった返す田町駅から地下鉄に駆け込んで、京橋フィルムセンターへ。川島雄三監督の特集上映、どれも何度も観たいけれども、そうだ、やはり『喜劇 とんかつ一代』(1963/東宝)だよね、と思いついたのは、昼すぎに和幸の「…

勝新の眼球、『顔役』

今年は勝新太郎没後十年。命日が巡り、また勝新のいない夏がやってくる。新文芸坐にて勝新太郎監督『顔役』(1971/勝プロ)を観た。製作に西岡弘善、撮影に牧浦地志、美術に西村善信、この時期の座頭市映画でもおなじみのスタッフが脇を固め、監督勝新をサ…

ビリーと絶対

月曜日、午後七時過ぎにすべり込んだ学習院大のY氏の映画誌講義。本日のお題はビリー・ワイルダー、ちょうどAFI功労賞の映像が流れていたところ。AFI映像を観るたびにいつも感じることは、なんと祝福に満ちた場なのかということ。賞や権威を讃えるのではなく…

人生における指標・越路吹雪

ずいぶん前に録っておいたビデオを観る宵の口。数日前に『次郎長三国志』の越路吹雪のことを思い(わたしの人生の「ある」指標となるのは、いつでも、「越路吹雪のお園」と、『秋津温泉』の岡田茉莉子と、『洲崎パラダイス 赤信号』の新珠三千代だ)、市川昆…

五月の風景5 改めて勝新座頭市

五月十五日、火曜日、くもり、雨、そして晴れ。雨の日は湿度のせいか気圧のせいか、いやどちらも言い訳だろうけれど、からだが鈍くてなかなかふとんから起き上がれない。十時ころから机仕事をはじめ、鬼頭ブラス(5/26)の庶務など。本番まであと十日、いち…

五月の風景4 果敢なるエノケン

五月十四日、月曜日、晴れ。早起きして、友人に長々とメールを書いていたら、送信した直後に彼女から電話が鳴った。「早いね、もうメール読んだの?」「えっ、送ってくれていたの?」。こういう奇妙なシンクロが起きるのはとてもうれしい。晴天の下を張り切…