散歩

大阪の冬と「えべっさん」

一月は晴れた日ばかりつづく。大阪では東京よりも「北海道出身」というのがすこし珍しいみたいで、わたしの服装を見るたびに人は「さすが北国生まれはちがう」と言ってくれるけれど、薄着なのは自分のからだの代謝を怠けさせないためだけのハナシ。大阪の冬…

秋の町歩き/10月16日という日にむけて

何度かの長い雨を経て、町はすっかり秋すがた。空にはひつじ雲、いわし雲、うろこ雲。真っ直ぐにのびていくひこうき雲のラインも目立ちます。長袖に着替えて(この、薄手の長袖シャツ一枚で歩くことができる季節がすきだ)、予定のない日よう日には町のどこ…

六甲山から有馬、岩と山のノスタルジー

子どものころの話。わたしの父親は山親爺で、週末が近づくとそわそわしはじめて、金曜日の仕事が終わると屋根裏の物置や車庫の奥からは、釣竿やら、魚市場で見かけるような防水のゴムつなぎ(胴から長靴までつながっているやつ)やら、テントやら、いかつい…

大阪桜時間

昨年までは神田川沿いの桜をながめながら井の頭公園へ向かう散歩がこの時期のお決まりだった。公園の手前で路地を曲がり、菜の花と桃の花と桜がそれぞれ勝手に咲き乱れ、地面からつくしがにょきにょきと生えていた、あの放ったらかしの原っぱはきっと今時期…

春の奈良へ、ふたり旅

桜がちょうど花開いて町が華やかになったちょうどよいタイミングで、札幌からママハタリがやって来ました。二泊三日の関西旅行を一緒に。大阪在住歴はまだ三ヶ月、案内できるほどくわしくないし、ミーハーだし、なにより散歩の延長ですこし遠くに出かけたい…

散歩にはコーヒーとおしゃべりと猫がつきもの 大阪天満橋〜中之島

「旅と喫茶とカレーと日常 モハキハ(→☆)」というお店をはじめるようになって、月よう日から木よう日まで、ほとんど散歩をしなくなった。自宅からモハキハまでは歩いても五分ほど、その短い距離すらも荷物の多さを理由に自転車で往復するようになってしまっ…

三月の京都一乗寺散歩

目覚めるとくもり空の日が増えて、台所の窓辺で朝日を浴びるのが午前八時の日課だった猫がつまらなさそうな顔でふとんに残ってふて寝をし、洗濯ものを屋上に干してでかけた数時間後に走って戻ってくる、そんな日常に春の近さをかんじます。早起きした日よう…

秋の日の奈良さんぽと「くるみの木」

大阪から東へ向かい生駒山の腹にあいた長いトンネルを抜けると、そこはもう奈良。生駒山には先日、宝山寺や山上遊園地に出かけたばかり。山のてっぺんには紅白のテレビ塔がいくつも立っていて、遠くからシルエットで眺めるのもすぐそばで見上げるのもどちら…

ミスハタリの虹と雪のバラッド 十一月の札幌旅

三泊四日で札幌へ。今年六度目の北海道はすでに紅葉もエピローグ、いつもより相当早い初雪が北風に舞う、冬の勇み足。育った家の裏手には、芝生、丘、池、砂場、運動場、野球場、アスレチック広場、相撲の土俵まで揃った大きな公園がある。小学生のころには…

九月、十月、ハタリの散歩道 2

十月もあと残りすこし。月曜日、雨のヨコハマ中華街にて平岡秀子さんを囲んで、いまだ亡くなった気がしない平岡正明さんのことを偲び(若いときの写真や文章をみんなで回し読みしたりね、若き平岡さんは美青年です)出版界や落語界をネタに編集者の方々と紹…

九月、十月、ハタリの散歩道

なんだかパタパタしている、2009年のミスハタリの冒険と計算と日常と旅と人生と労働。九月の北海道旅のつづきだって書き足したいのに、円山動物園のキュートなしろくまツインズにも、ニセコヤミーズのピッツアとビールにも、見事な羊蹄山にも、雪秩父の硫黄…

ミスハタリの北海道凱旋旅 2 小樽さんぽ

札幌から小樽へ。気動車キハ天国の北海道でも、この区間は電化・複線路線なのでいまいち面白みに欠ける。見どころといえば、銭函駅を過ぎたあたりで海のすぐそばを走る景色(と、冬場に小樽築港駅のホームに停まっている除雪用の赤い電気機関車)くらいなの…

ミスハタリの北海道凱旋旅 1 札幌、中島公園の猫たち

秋の北海道は札幌小樽ニセコへ、旅をしていました。ふだん、社会のみなさんが勤労している平日にこっそり旅かばんを抱えて列車に飛び乗るミスハタリが、今年は珍しく暦の赤い数字が並ぶ連休に旅をしています。いや、これまでの定義でいえば「旅」というより…

夏と秋のさかい目の散歩 大阪玉造〜土佐堀〜靱公園

線路沿いでは朝顔のエンディングと曼珠沙華のプロローグが重なっている九月初旬、旅と散歩の記憶を整理していたら、まぶしかった夏休みを思い出しました。八月さいごの週末、名古屋でライヴを終えたあとに近鉄アーバンライナーで大阪へ。よそさまの庭先で木…

ミスハタリの南紀冒険 後篇:熊野、森と川とパンダの夏休み

熊野の山道をくねくねくねくね走っていくと、熊野本宮のちかくに温泉がいくつか湧いています。そのひとつが湯の峰温泉。日本最古の温泉といわれており、ここの「つぼ湯」は熊野詣の旅人の疲れをいやし、いよいよ本宮大社にいたる直前の禊に使われてきた湯ご…

ミスハタリの南紀冒険 前篇:和歌浦の海辺にて

毎日が夏休みみたいな暮らしをしているくせに、カレンダーの赤い数字や休日の知らせには敏感で、一週間ほどのれんを片付けて「夏休み」に全力投球していたハタリブックスです。一年のほとんどを昼寝と悪だくみと旅に費やしている事情はまあ棚にしまいこんで…

旅人/散歩者のルール 大阪谷町〜中之島〜四ツ橋

午後三時を過ぎて暑さの峠を越えたら、眠った猫を起こさないようにして出かけます。大阪散歩者ビギナーらしくハナコウエストに載っていた地図を軽くあたまに詰め込んで、まずは玉造から谷町六丁目方面へ。玉造界隈のすてきなお店は以前「OSAKA東区スタンプラ…

ぜいたくでふつうの夏休み 2009 大阪プロローグ

今年は勢いあまってすこしぜいたくな夏休みをすごしています。ぜいたくなのは、猫とごはんと気分のもんだい。大阪では天ぷらの締めに紅しょうがが出てくること、淀川の花火は隅田川のそれとはずいぶん趣がちがって迫力があったこと、谷町界隈には気になる古…

夏の扉をひらく散歩

見上げた空、わたしの夏のはじまり。勝どき橋のうえから築地市場を望むと、もっと向こうには東京タワーが見えた。土曜の朝は早起きをして築地で朝寿司。外国からの観光客で混雑するなか、市場の大人たちとターレットは、ふだんと変わらない様子でブイブイ働…

宇宙日本世田谷の欠けた太陽と、平岡正明さんのこと

日本の陸地で四六年ぶりとなった皆既日食。午前十一時をすぎたころ、世田谷区明大前あたりから見上げた空はくもっていた。月が太陽をすこしだけ食べてしまった時間。クロワッサンみたいな太陽だった。 七月九日の夜中に平岡正明さんが亡くなった。その葬儀の…

夏の鎌倉、センチメンタル寅次郎

雨が上がったら鎌倉だ、と出かけてきました。 「R OLD FURNITURE」や「うつわ祥見」をのぞきたいなだとか、鎌倉市農協連即売所で鎌倉野菜を買うのだなど、いろいろ欲望を抱えつつ、今回のいちばんの目あては鳩サブレーでおなじみの豊島屋本店。本店限定グッ…

六月、雨忘れの散歩(大阪・神戸)

六月の半ばからすこし長い散歩に出ていました。梅雨時期だというのに、あまり雨で悩むことのない日日。散歩と甘い記憶のメモランダム。 さいきん出会ったカワイコちゃん。『三好さんとこの日曜日』に出てくる「梅」という名の猫に似ています。 ご利益のある…

fresco みかん畑とガラスの遠足

花を生けようと花瓶を探すと、テーブルのうえに小粋なガラスの器があった。聞いてみると「fresco」というガラスブランドのものだという。くもりがかった色味、ふくよかなカーブ、絶妙なシェイプ、いっぺんに恋におちた。ほかにもグラデーションやマーブルの…

緑と坂のある町 〜 「OSAKA東区スタンプラリー」

週末の雨があがり、よく晴れた月曜日。大阪玉造にあるブックカフェ「beyer(バイエル)」に行きました。心地よいうわさをきいていたし、なにかの本でお店の様子を見たことがあったし、「きっと好きなところだとおもう」という声もあった。駅前からアーケード…

新版ミスハタリの北陸旅 4 海と絶壁と二三味珈琲

朝食後に宇出津をあとにして、時間の許すかぎり能登ぐるりの旅に出ます。まずは赤崎でいちご狩り。露地もののいちごがたった千円で食べ放題。ここの畑のおばあちゃんは、時間制限なんてセコイことは言いません。真っ赤ないちごをぞんぶんに頬張るしあわせ。…

新版ミスハタリの北陸旅 3 能登、くじらをめぐる冒険

金沢をあとにして、くもり空の下を能登有料道路を飛ばします。能登半島は海だけじゃなく、山のある場所なのだなということが、めくるめく景色で実感。想像以上にアスレチックな土地だった。海沿いの細い道を走って、真脇ポーレポーレで立ち寄り湯。ここの「…

新版ミスハタリの北陸旅 2 金沢〜居心地のよい町とすてきな大人たち

糸魚川駅到着後、名残惜しく写真ばかり撮っていたら、先のホームに「特急はくたか 8号」が到着。大糸線カップルに別れを告げて、12:54糸魚川駅出発。一応は進行方向に向かって右側の席をおさえておいたけれど、海沿いとはいっても、海岸と線路のあいだに道路…

上野ほろ酔い散歩 上野動物園〜アメ横「大統領」

世の中にリンクして休日の上野駅で下車すると、文字どおりの人波。軽いめまい。でも今日は家を出るときからレジャー気分でいたのでだいじょうぶ、チビッコに衝突されたって、目の前でカップルが愛を語りあっていたってへっちゃらです(でもパンダがいなくな…

杉並新緑日和

四月もたくさん散歩しました。月初に桜の下を歩いた神田川沿いの遊歩道は、いまはもう緑の風景(→☆ 2009/04/07の日記)。 散歩途中に出会った猫が美人でドキドキしてもたくたとキャメラを準備していたら、さっそうと逃げられました。散歩といえば、武田泰淳…

あずき色の列車で「はにほへと」

東京で暮らしているものにとって、阪急の車両はやきもちをやいてしまうほどかわいい。あずき色の姿、ライトグリーンの椅子。そして阪急石橋駅の箕面方面行きのホームには旅の匂いがする。 桜井という駅で列車を降りたのは二度目。すこし歩いて「公認阪急桜井…