夏の扉 青春18きっぷde中央本線

青春十八きっぷを利用開始日に使うのは四年ぶりだ。午前五時前に起きて時刻表とほうじ茶をかばんに詰めて家を出た。昨夜の雨は上がったれど、梅雨を抜け切らない向夏の日、夏の扉を探すひとり旅。

吉祥寺駅できっぷにスタンプを押してもらってゴーウエスト! まずは通勤仕様の中央線快速E233系で高尾まで。高尾からは松本行きの列車に乗り換え。115系というのかな、古めだけれどもきれいな青いボックス席で旅気分がもりあがる。おやつをいただいたり、車窓を眺めたり、居眠りをしたり。

上諏訪駅で下車して観光案内所へ。あいにくのくもり空で諏訪湖はさほど美しくはなかったけれど、ビューっと噴き出す間欠泉に驚いたり、やる気の無いカモを冷やかしたりしてしばらく湖畔を散歩。

 

地図を見ると、ん、D51? 駐車場のそばに何気なく保存されていた蒸気機関車D51、キャーとかけよって写真撮影。やっぱりデゴイチは無骨でカッコイイなあ。

 

昭和初期に片倉財閥が「文化と社交と温泉の娯楽リゾートに」と建設したという、和洋折衷の館、片倉館で入浴。お庭も建物外観も洋風なのだけど、奥には畳の大広間もあるらしい。千人風呂というお風呂は水深百四十センチほどのプールのような浴槽で、床には碁石のような黒い丸石が敷かれていた。お風呂のお湯は水温がすこし低め、ステンドグラスの装飾や、柱のかんじ、この浴槽、以前にも似たようなお風呂に入ったことがあるなあ……と考えたら、ハンガリーのブタペストの温泉によく似ていた。

 

上諏訪駅前の小さなデパートで納豆巻とおみやげの信州そばを買い、上諏訪駅一番ホームにある足湯にもきちんと浸かってから、塩尻行きの列車に乗車。このあたりは貨物列車が走っていたりして、東京の生活圏内ではなかなか見られない列車がいるのでうれしいな。

 

塩尻から中津川、311系というのかな、新しくきれいなボックス席車両の電車で、木曽路を走る。景勝地「寝覚めの床」のあたり、オオサンショウウオがいたのかしら。うとうとしていたら急に大音量の嬌声。沿線の高校生の下校時間と重なっていたようで、女子高生たちが床に座り込んで歌をうたっていたので驚いた。中津川から乗り換えた快速はロングシート席。春に鬼頭ブラスの仕事であそびにいった多治見や古虎渓のあたりを通る。午後四時、名古屋駅のひとつ手前の鶴舞駅で下車して、お迎えの車に乗り込んで、明日のライヴのリハーサル会場へ。

旅というより、のん気な移動といった方がいいかもしれないけどね。