江戸の夏、花火の夜

東京に暮らして十年目を迎えたこの夏、はじめて隅田川花火大会を観た。今年はじめて着た浴衣(十六歳のときに縫っていただいたものを相変わらず着ています、半幅帯は今年もやっぱり貝の口で結ぶのです)。向島の路上から見上げた夕暮れの空、夏を謳歌する町人たち(江戸の香りを残すこの町では、町人という言葉がよく似合う)、氷水で冷やされたビール、揚げもののにおい、はしゃぐ子どもたち、熱い日に火照ったままでのアスファルト。はじめて観た江戸の空は、問答無用に夏を告げてくれました。花火のあとに、角にある喫茶カドでのんだ生ジュースがとてもおいしかった。帰りみちに見た東武特急きぬがわ号もすてきだった。夏の扉がまたひとつ開いた七月の夜。