台北・安全な散歩 4 町と食欲

ホテル「欧華酒店」のドアマンのおじさんに見送られて、歩いてMRT「圓山」駅へ。街路樹が傾いていたり倒れていたり、枝や葉っぱが道に広がっていたり、直撃した台風のすごさを物語っていた。MRTというのは台北市内を主に走る電車で、地下を走ったり、高架を走っていたり、路線によってはモノレールになっていたり、なかなか面白い。きっぷを買うとICチップの入ったプラスチックの青いコインが出てきて、それを改札口にかざすと反応する仕組み。一区間は20元(だいたい70円くらい)で初乗りでかなり遠くまで行く事ができる。安いなあ!

まずは「台大医院」駅まで。明後日に国慶節を控えた総統府では、ちょうどパラグアイの大統領が来台していて記念式典を行なっていたので遠巻きに見物する。兵隊さんがズラッと整列し、その横にはブラスバンドが待機。スーザーホーンを抱えた人も五人、直立不動。いまに動くかと待っているのに、いつまでもつづくのはエライ人のお話。どこも一緒だねえ、とあきらめて離れたところでファンファーレ。

そこから歩いて「台湾民主紀念館」へ。ここは蒋介石を記念した「中正紀念館」だったのだけど、歴史認識がかわり、今年の春に名前も意味も変わったのだという。それでも観光客は次々とバスでやってきて写真撮影。いちいちいろいろなものが大きい。この紀念堂も公園内の国歌音楽庁も国家戯劇院も、すべての建物が建て替え中だった。いろいろ事情があるらしい。台風で倒れた公園の植木を、みんなで直していました。

台北のタクシーは、会社がちがっても車体はみんな黄色。街の中でとても目立つしかわいい。でも乗っている運転手はおじさんなのでかわいくない。この旅行中にも何度かタクシーで移動したけれど(だって安いんだもの)、一度だけ不良運転手に出くわした。携帯電話で喋りながら運転し、ドラえもんの鼻唄でごまかし、道案内もいいかげん。目的地や現在位置を地図で把握しながら乗っていたので、遠回りや料金のボッタクリこそなかったものの、ひじょうに気分が悪かった。そういうこともたまにある。そして台北の道路事情は、タクシーに限らずみんな運転が荒い。

信儀路を歩いて永康街へ。曇り空がすこし明るくなったと思ったとたん、きゅうに暑さが増した。台北の十月は夏の終わり、残暑の季節。店先では夏服が最終セールで売り出されています。

まずは「冰館 Ice Monster」でフルーツたっぷりのかき氷をいただきます。ジャーン!

マンゴーとキウイとイチゴの三色の果物に、さらにマンゴーアイスがトッピング。この豪華で巨大なかき氷、受け取ったときにはひるんだけれど、果実が甘くて瑞々しくてじつにおいしい! 氷と一緒にいただくせいか、甘さもしつこくなく、スルスルといただけました。

 

永康街はどこかヨーロッパの街並みを感じさせるような路地が多い町で、街路樹や公園もあり、アパルトマンと呼びたくなるような蔦が絡まったマンションのとなりにお粥屋さんがあったりして、散歩がたのしくなる町。曇り空のせいか、水分を吸って茂った木々のせいか、午前十一時という時間帯のせいか、ちょっとアンニュイな雰囲気。



ここには、「永康街刀削麺」やお茶の「沁園」や、ちょっと気の利いたセレクトショップや、小龍包の有名店「鼎泰豊」の本店などがあります。月曜日午前十時半の「鼎泰豊」はまだ空いていたものの、十一時半には店の前の道が大混雑するほどの盛況で、うわさどおりの人気ぶり。台北市内には支店がふたつあり、忠孝店にわたしたちは食べに行きました。くわしくは「8 小龍包と女の子」をどうぞ。

永康街台北在住のイラストレータ青木由香さんもなじみのようで、彼女の『台湾ニイハオノート』という本にも詳しく紹介されています。ほかにもおかしな情報がたくさんで、王道の観光ガイドブックのほかに一冊持っていると、台湾散歩がたのしくなる本。わたしも読んでから散歩に出かけました。

台湾 ニイハオノート

台湾 ニイハオノート


さて、観光のお話はいろいろあるのですが、胃袋の話をもうひとつ。屋台の乱雑さが苦手なうえに、中華料理にあまりなじみのないママハタリと一緒の旅行ですが、やはり台湾らしい料理を食べておきたいなということで、観光二日目に訪れたのは「度小月」。ここは台南料理の代表的な面、担仔麺の有名なお店だそうです。


エビでだしをとったスープににゅうめんのような細い麺と、そのうえに肉味噌がのって、そしてパクチー。わーい、パクチー大好き! お店は新しくておしゃれな造りなのだけれども、麺を茹でているおじいさんは真面目で、つい写真など撮っていると「のびるから先に食べる!」とわざわざ言いにきてくれました。おだしもおいしくて、スルスルといただいてしまいます。小ぶりのどんぶりで一杯50元。屋台だと20元くらいで食べられるらしい、一杯100円くらいじゃないの。呑んだあとの一杯には最高だろうなあ。

それから、おみやげにはパイナップルケーキを、と、上述の『台湾ニイハオノート』でも「台中の有名店、犁記なら、他のオカシもおいしいので行く価値あり」と書かれていた「犁記餅店」へ。店内では女の子たちが群がって、できたてのパイナップルケーキを包装していました。おみやげ用と自分用にいくつか買って、夜にホテルで烏龍茶と一緒にいただきましたが、いままで食べたことのあるパイナップルケーキでちょっと気になっていたベタッとしたしつこさや、押し付けがましい甘さがなくて、おいしかった。

台北にはたくさんおいしいものが溢れているので、あれもこれも、というのも楽しいのだけれども、胃袋には限りがあるものです。とりあえず今回いただいた数少ない食事とおやつはどれもおいしかったので、しあわせでした。

【冰館 Ice Monster】 →台北ナビの紹介ページ
【度小月】 →台北ナビの紹介ページ
【犁記餅店】 →台北ナビの紹介ページ



台北・安全な散歩 2007】
1 台風と旅支度  2 出発 3 欧華酒店 4 町と食欲 5 町と好奇心 6 台北商旅慶城館 7 猫カフェにて 8 小龍包と女の子 9 台湾新幹線 10 帰国