洋菓子のクドウと『夜を巻き戻せ』

これもじつは十二月一日のハナシ。有楽町から京橋まで歩く。その途中、銀座一丁目「洋菓子のクドウ」に寄る。午後七時の閉店間際、ショーケースに残っていたシュークリームを自分のおやつにするのだ。この店構えとパッケージも含めてクドウのファンなのだ。そしてシュークリームはカスタードクリームたっぷりで甘くておいしい。おみやげにはおいしいと評判のレーズンクッキーを(どうかレーズンが食べられないとか、そういうことがありませんように!)。

映画美学校の試写室にて、岸野雄一監督『夜を巻き戻せ』。この映画、二年前に撮影をされ、しばらく編集されないままだったものが、ここにきてとつぜん完成されたという。クラブ歌手のアップからはじまり、『殺しの烙印』のような字体で「夜を巻き戻せ」とタイトル文字が現れる。メロウなメロディとふざけた歌詞が頭から抜けなくなったところで、音楽は故意に途切れ、現実の世界がはじまる。主演のかとうけんそうさんの、いつも泣きそうな表情がよかった。「夜を取り戻せ!」とか「夜を奪い去れ!」とかいう勢いではなく、「巻き戻せ」というのはじつに控えめでありながらしぶとい感情。きれいに整理された物語筋に、笑える(ちょっといやな気持ちにもなる)余談もありの、四十分間があっという間に過ぎ行くエンタテインメント。総じてまっとうなドラマ。どこかのシアターで二本立てで観るとして、併映される次回作がどんなかんじになるのかも楽しみです(この映画、上映の機会を探しているようなので、観たい方はリクエストを出すといいとおもいます)。

秘密博士さんをはじめとした個性的なキャストが素敵なやりとりを繰り広げるレンタルビデオ屋のシーンに、ハタリもエキストラでちょこっとお邪魔しています。二年前の夏の、旅と旅の合間の激務の午前二時に自転車をこいで現場に遊びに行き、とちゅうの環八沿いで三度も職質を受けたこともいい思い出です。あの一瞬、カップル役を演じたお相手の方は、何かのデザイナーだと聞いたような気がするけどなあ。誰か知っていたら彼によろしくお伝え下さい。

【洋菓子のクドウ】
【岸野雄一】