阪東妻三郎×清水靖晃 『雄呂血』

原宿駅の裏手の「杜」に入るのははじめて。すっかり空が暗くなった暮れ六つ、東京国際映画祭の提携企画として行われる「OROCHI!! 〜神宮の杜〜」というイベントを観に、明治神宮内にある神宮会館ホールへ。

無声映画『雄呂血』(二川文太郎監督/1925年)を、弁士坂本頼光の語りと、清水靖晃さんによる書きおろしの音楽をつけて上映しようという試み。演奏は「清水靖晃&サキソフォネッツ+ロイヤル・アートレス・オーケストラ」。鮮やかだった!

バンツマの立ち回りは『血煙高田の馬場(決闘高田馬場)』(マキノ正博稲垣浩監督/1937)がすばらしいと思っていて、今もそれはなお変わらずなのだけれども、それより12年前の華麗なチャンバラ。自ら映画のなかの時間をコントロールするような緩急ある身のこなしもすばらしいけれど、このバンツマ、実に表情がいいのだ。トーキー以前の映画だなと改めて感じる。音は弁士と楽隊と観客の拍手歓声に任せた。俺は映画を動かす、そんな心意気を感じさせる、実にぜいたくな活動写真。クライマックスのチャンバラでキャメラがぐんと俯瞰になってかなり手前まで引いたところにバンツマが斬り込んでくる一連のシーンがすばらしかった。ああ、バンツマ、かっこいい。