「猫と古本で人生はまわる」〜浅生ハルミンを読書する

先週の電車のなかで読んでいたのは、嵐山光三郎さんのエッセイ集、『人妻魂』。雑誌「ダカーポ」の連載をもとにしたもので、総勢五十名強の人妻が短くて読みやすい文章で紹介されている。みなさん、文才ある人妻ばかり。武田泰淳氏の担当編集でもあった嵐山さんが「最強」と言う武田百合子さんや、林芙美子大杉栄をめぐる神近市子と伊藤野枝夏目漱石坪内逍遥などの歴史的文人の妻など、明治大正昭和をたくましく、慎ましく、ずうずうしく生きた、人妻たちのなんと魅力的なこと!

人妻魂

人妻魂

この表紙を飾る人妻絵は、浅生ハルミンさんによるもの。ハルミンさんの絵はだんぜん線がいい。あと、エッセイなどで横に添えられる文字もすばらしく気が抜けている。

雑誌編集者時代、はじめて担当した連載で、浅生ハルミンさんに絵をおねがいをした。劇作家/俳優の長塚圭史さんにちょっとへんぴな東京デートをしてもらうという企画だった。都合一年間つまり十二回、ハルミンさんに絵を描いていただいた。ハルミンさんはいつも絵だけではなく、横にちょっとした文章も書いてくれた。それが「さすが」とうなってしまうくらいに、おもしろくて、わたしはいつも原稿引取りの駅でハルミンさんと別れたあとに、こっそりホームで原稿をのぞき見て、うーん、とうなったのだった。とくに、あらかわ遊園の回に描いていただいた四コマまんがが印象的だ。

『人妻魂』の表紙にハルミンさんの絵というのはとてもよく似合う。以前、リビングデザインセンターOZONEで開かれた「日本人とすまい・家事展」の展示や展覧会パンフレットにふんだんんに絵が使われていたときもうなったけれど、今回もこの温度感がとても心地よい。

さいきんではすっかり「猫のひと」となったハルミンさん。そんなわけで遅ればせながら今週の電車のなかでは、『帰ってきた猫ストーカー』を読んでいます。

帰って来た猫ストーカー

帰って来た猫ストーカー

私は猫ストーカー

私は猫ストーカー

その前著『私は猫ストーカー』は、映画化が進行中。七月公開予定ですって。すばらしい!
(映画会社スローラーナーのブログ → id:slowlearner_m

昨年は、名女子ミニコミモダンジュース」の近代ナリコさんとの双子のように上梓された著書もあったり(『ハルミンの読書クラブ』と『ナリコの読書クラブ』。「彷書月刊」連載の「ハルミン&ナリコの読書クラブ」の単行本化)、新著がつづいているハルミンさん。

ここにきて、ついに出ました! じゃーん、ハルミンさんの集大成みたいな新刊です。

猫座の女の生活と意見

猫座の女の生活と意見

あの、本好き女子ならあこがれる(JJ氏に思慕の念をもつのと同時期にね)、サイの本屋さんこと晶文社から出版です。「モダンジュース」に寄稿された鴨居羊子さんや水森亜土さんについての文章や、女子と古本とおかんと素敵なおじさまなど、暮らしのなかのさまざまな出来事や思い出が、のんびりと、らくがきをするような気楽さで(でも仕事中のハルミンさんは実はわりとしんけんに机に向かっているとおもう、かなりのひんぱんに猫に余所見するとおもうけど)、描かれていきます。

そういうわけで、来週の電車のなかで読む本は『猫座の女の生活と意見』に決まりました。本文の紙が折によって二種類使われているあたりもかわいいです。ハルミンさん、おめでとうございます。わたし、ブックファーストでサイン本を買っちゃったよ!

【浅生ハルミン】