グッバイサンキュー・マイ・オールド・フレンド 〜 「スタジオ・ボイス」休刊と寄稿

八月六日発売号でSTUDIO VOICEが休刊。この「Greatest Dead ゼロ年代ソウカツ!」特集では00年代に亡くなった著名人の特集が組まれ、そのなかでハタリは浅利芙美名義で平岡正明さんについての追悼文を書かせていただきました。STUDIO VOICE (スタジオ・ボイ…

宇宙日本世田谷の欠けた太陽と、平岡正明さんのこと

日本の陸地で四六年ぶりとなった皆既日食。午前十一時をすぎたころ、世田谷区明大前あたりから見上げた空はくもっていた。月が太陽をすこしだけ食べてしまった時間。クロワッサンみたいな太陽だった。 七月九日の夜中に平岡正明さんが亡くなった。その葬儀の…

平岡正明『ジャズ宣言』

一昨日の夜、風呂上がりの部屋にはなかなか風は通らなくて、灯りを消してカーテンを開けた。その夜は奇妙なまでに丸い満月だった。数時間前、港町のまだ高いところに浮かんでいたそれは、ななめ下まで落ちていた。汗が引くのを待たずにカーテンを閉める。や…

人生をかえる本とコーヒー 〜【本篇】 下北沢「気流舎」にて

できあがった座頭市本(「座頭市映画手帖 petit」)を手に「気流舎に行きたい」とひとりごちたら、ハーポ部長から素早いメッセージが届いたのは昨年末のこと。それからずいぶん日が経ってしまったけれど、ぽっかり空いた水曜の午後、はじめてそのドアを開け…

「猫と古本で人生はまわる」〜浅生ハルミンを読書する

先週の電車のなかで読んでいたのは、嵐山光三郎さんのエッセイ集、『人妻魂』。雑誌「ダカーポ」の連載をもとにしたもので、総勢五十名強の人妻が短くて読みやすい文章で紹介されている。みなさん、文才ある人妻ばかり。武田泰淳氏の担当編集でもあった嵐山…

映画『ICHI』公式ビジュアルブック

綾瀬はるか主演の映画『ICHI』が公開中です。この映画の公式ビジュアルブックが講談社より出ており、そのなかでハタリブックスの「座頭市映画手帖」が参考文献として挙げられています。巻末の「協力」にハタリブックスのクレジットを入れていただいています…

鴨居羊子と細江英公 「ミス・ペテン」

フレンチ・カンカンについての指南という名のおしゃべりをいただいた日本橋のカフェで、会話のエピローグでさりげなく渡された一枚のポストカード。「細江英公写真展 <ミス・ペテン>」。あ、鴨居羊子さんですね、と、手に取ると、「えっ、ごぞんじですか!…

誕生日の戒め/向田邦子さんのこと

ずいぶん長らく、表だっては書かないでおこうと思っていたことを、ちょっと書いてみようと思いついたのは、夜中の二時前のことだった。=======================もうずいぶんと前の話。ママハタリが電話で「あんたみたいな本を読んだよ」と言った(→この日の…

時刻表先生、宮脇俊三

先日の旅路で『終着駅は始発駅』を読んで以来(→その記事はこちら)、宮脇俊三さんの本を続けて読んでいる。時刻表や鉄道や旅が好きなひとびとには「今さら!」と笑われそうだけれど、『時刻表2万キロ』と『最長片道切符の旅』。文庫で探すよりも、やはり当…

ミスハタリの道北旅 2 『終着駅は始発駅』

昼すぎに出発する予定がちょっとした出来事があり、空港内で五時間ほど読書することに。旅の供にと鞄に入れてあった本を読了してしまった。それは、宮脇俊三『終着駅は始発駅』(新潮社)。昨年の大糸線〜北陸旅で寄った金沢「古書あうん堂」で買った古本。…

マキノ雅弘『映画渡世』とマキノイヤー

待つことがすべてだったある深夜、あまりの手持ちぶさたに本を開いたら止まらなくなった。マキノ雅弘『マキノ雅弘自伝 映画渡世』(平凡社)。父マキノ省三が京都で活動写真を手がけるようになった、日本の「カツドウ」創世記、「父の活動写真と共に私が生れ…

植草甚一/マイ・フェイヴァリット・シングス

うっかりしていたのだ! 「植草甚一/マイ・フェイヴァリット・シングス」展が、明日で終わるんだってこと! 仕事をしたりフェルトを縫ったりドーナッツを食べたりしているあいだに、季節はすっかり冬を迎え、空は青く、やせがまんのジャケットではすっかり…

秋の札幌、庭とマドレーヌ

伸びるむくげは夏の名残 猫の視点(猫のシイナさんの墓は庭のなかほどにあるのだ) 完全武装の父が取り除いたスズメバチの巣、戦いの後 空の色がかわってきました 秋が駆け足でやってくる 今回、家で見つけだしたのは、子どもの頃に好きだった絵本の「マドレ…

終わりのある住居 富士山荘

仕事場に行く電車のなかで、「婦人公論」の吊り広告。苦笑いするよな文字列を追っていくと、<泰淳・百合子の「武田山荘」を富士に還して 武田花>、なんですって。ややっ、と、その足で本屋に入って、ふだんさわらない類の雑誌をめくる。「富士山荘」につい…

旅する猫ニョロリ

ハタリオフィスの仕事用コルクボードには、「猫を飼えますように…」という七夕の短冊がいまだ掲げられています。仕事用なのに。杉並に引っ越してきて半年が過ぎ、長年なじんでいた吉祥寺界隈から動いてよかったかな、と思ういくつかの出来事と風景のなかに、…

毒血と薔薇―無頼大集合

神保町の東京堂書店にて、平岡正明さんと菊地成孔さんのトークショーを見に行く。平岡さんの新著『毒血と薔薇 コルトレーンに捧ぐ』(国書刊行会)の発売記念イベントで、本書の解説を菊地さんが書いたことで実現したという組み合わせ。事前に書簡はあったも…

五月の風景2 芍薬と向田邦子

五月十二日、土曜日、晴れ。午前中は机に向かって昨日と同じようなことを繰り返してはグンニャリする。午後は南烏山にある世田谷文学館にて春の企画展「向田邦子 果敢なる生涯」を鑑賞。のちの作品で垣間見られるその生い立ちが年表とエピソードで綴られ、生…