The Miceteeth、やがて出会う音楽
今年の一月、わたしがウサギのなかに入ってモゾモゾと踊りパタパタと暴れていたある晩(→☆2009/01/30に書いた1/11の日記)のこと。そのライヴにはワッツタワーズのほかに相対性理論とウリチパン郡が出ていた。二〇〇八年のわたしの耳はウリチパン郡びいきだったのだけれども、大阪をホームにしている彼らのこと、『ジャイアントクラブ』のレコ発ライヴを青山CAYで観たことしかなかった。ひさびさに観るウリチパン郡、んん、あれっ、ベースがいる。ベースが加わった編成も、そのベーシストを見るのもわたしははじめてだった。細くて背が高くてひょうひょうとした佇まいで、かなり細かくてタフなベースを弾く、あれは誰でしょう。ライヴ後に楽屋で話したその青年は和田拓くんといって、そもそもは「The Miceteeth」というバンドでベースを弾いているのだと知った。
マイスティース……名前に聞き覚えがあるような、って、わたし、そのバンドの名前を原稿で書いたことがあるじゃない! 映画『人のセックスを笑うな』の劇場プログラムをめくると、HAKASE-SUNが担当した映画音楽についての文章を書いた流れで、エンディングテーマの「MY LIFE」を演奏したのがマイスティースのメンバーだ、とたしかに書いていた。そう書いていながらも失礼なハナシ、わたしはレゲエやスカから遠いところにいたので、レゲエといえば映画『ロッカーズ』とオーガスタス・パブロくらいしか知らないし、スカと聞いてもスペシャルズくらいしか思い浮かばないような門外漢、マイスティースのことを聴いたことも観たこともなかった。便利な二〇〇九年、YouTubeで検索するだけでたくさんのライヴやPV映像を観ることができる。たとえば、
しかしまずは最近の音楽を、と最初に聴いたのが『07』というアルバム。悪くはないし、耳馴染みもいいし、たしかにその後に繰りかえし何度も聴くことになったのだけれども、なぜかあまりピンとこなかった。細切れの音楽がするするりと耳から耳へ抜けてしまうかんじがした。件の青年、ベーシストの和田さんには「今日は嵐で家から出られないので、マイスティースを聴いてみました」とだけ伝えた。それから、さかのぼって聴いたのが『MEETING』というファーストアルバム。つづいて『Baby』、『from RAINBOW TOWN』。これらは二〇〇三年、二〇〇四年、二〇〇五年と毎年出ていたアルバム。同じ時期に行なわれたツアーのライヴ映像も観た。あまりに瑞々しいそのライヴが数年も前に起きていた事実だというのがくやしいけれど、三枚のアルバムといくつかの映像で、この十人の男の子たちによる、くそマジメで甘くみえっぱりで無邪気なマイスティースの音楽を好きになっていた。PVやジャケットのデザインセンスの良さ、お揃いで着ていた洒落た麻のジャケットや、背中に施したナンバリングの妙、セルフマネジメントのこだわり。ああ、マイスティースは「バンド」なんだなあ、と想像した。いくつかのメロディをそらで歌えるようになったころ、いつかライヴを観たいななんて思っていたんだ。
しかし、わたしがマイスティースを知ったときにはすでに彼らのウェブサイトは一年前のライヴスケジュールのまま更新を止めていた。そしてバンドは四月に解散した。
現在はそれぞれに活動をしているというし、彼らが九年ものあいだ密な関係を保って育ってきた「バンド」だったがゆえにバンドという生きものは成長もすれば停滞もするし後退や変移だってするものだから、と、もう二度とその音楽の場に居合わせることはないんだろうなと想像する一方で、いやいつか親の世代を湧かせたアリスみたいにまったく別の生き物として再結成しちゃったりするのだろうか、どうだろうか、などとぼんやり思っていたら。
来年の一月十日、タワーレコードの日本上陸30周年イベントからラブコールを受けて、一夜限りで「復活」するそうです。長く休止状態でいたバンドがあいさつもせずにとつぜん解散してしまった、その非礼をわびつつ、あいまいな「、」をくっきりとした「。」にかえるライヴなのかしら。そんな想像は再結成を求めるファンにはつらいことかもしれないけど、名文でも駄文でも文章を完成させるためには「。」って大事なものよね、なんて思ったりしつつ、はじめて出会うバンドの姿にほのかな期待もするのです。
TOWER RECORDS 30th Anniversary SPECIAL「Love or Hate Night Vol.2」
VENUE:代官山UNIT、UNICE、SALOON
DATE:2010年1月10日(日) OPEN 16:00 START 17:00(予定)
LIVE:THE MICETEETH、東京パノラママンボボーイズ
DJ:橋本徹 - UNIT、クボタタケシ - SALOON、JAPANESE SOUL CREW - UNIC
その他:月亭方正(山崎邦正) - 落語 and more...
【THE MICETEETH】
1999年大阪で結成。結成当時のメンバーは10人。2001年自主レーベル「tentosen」を設立。日本語スカを代表するバンドとして活躍し、今年の春に解散。
現在はメンバーがソロで活動中。
次松大助(ボーカル)はソロ・プロジェクト「箱」としても個人としても音楽活動を継続中。 金澤義(ドラム・リーダー)は。"SUPER GENKI BROTHERS"、"Philharmonic Reggae Session"のメンバーとしても活動。 森寺啓介(ギター)ソロ・プロジェクト"Morry Taylor"、"Philharmonic Reggae Session"のメンバーとして活動。和田 拓(ベース)"Philharmonic Reggae Session"、また藤井とともに"THE PARTY BROTHERS"のメンバーとしても活動。 藤井 学(キーボード)。"藤井学バンド"、和田とともに"THE PARTY BROTHERS"のメンバーとしても活動。
今回は後期THE MICETEETHのメンバー5人にサポートメンバーを加えて一晩限りの再結成ライブとなる。
観にいくことに決めました、だって恋をしたからね。
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