ハタリハウスのお引越し2009

これまで引越をした日はたいてい十二月の晴れた日で、そのジンクスは今回も当たりだった(→ ☆前回の引越始末記は2006/12/23)。長く住んだお気に入りの町、吉祥寺・杉並界隈(あわせて十一年!)を離れるというのに、この晴天がわたしをさみしくさせなかったのだとおもう。前向きなムーブメントはセンチメンタルを一蹴する。一度だけ気もちがゆらいだのは、宮前分室でもらった転出届に入っていた「なみすけ」の透かしを見たときだけだ。吉祥寺から杉並に引越してきたときにわたしを勇気づけたのが、区のキャラクターになったばかりの「なみすけ」の脱力したフォルムで、わたしは町のなみすけウォッチャーとして全力で愛してきたのだけれども、この三年のあいだに彼はすっかり有名になり、杉並区のごみ分別指導や、メタボ健診推進や、図書館へのお誘いに忙しく、今では町のあちこちで見かけるようになった。


【杉並区 なみすけ】

すべての荷物を運び出した部屋は、ひとことだけ発したことばがとてもよく響く。杉並区は離れますが、わたしのなみすけは連れて行きます。

サンキューマイハウス、この町よ。お気に入りのジャックルコーの旅かばんをかついで、いつものロングブーツで家出しよう。
春と夏と冬にきまって「青春18きっぷ」をしのばせて夜行列車に乗り込んでいたように、こころのなかで「不可能を通る旅一座」と呼んでいた渋さ知らズと半年にわたる欧州各国をめぐるハードな旅に出ていたときのように、知らない村を訪れて数時間に一本しか走らない路線バスに乗って山間の温泉をめざしたときのように、地の果てみたいな学園都市の外れに沈む西日を自転車で追いかけていったときのように、それからのら猫のしっぽを探してごく近所の小道で迷子になったときのように。長く明るい散歩、安全な冒険、デイリーな旅行。引越はいつだって、新しい風景と平穏な暮らしとときどきドキドキに出会える、人生のリロード。

いってきます。新しい町よ、どうかようこそと迎えてね。
ミスハタリはしばし東京を留守にして、大阪で暮らします。変わること、変えることも多いけど、変わらないこともやっぱり多い。今後ともよろしくどうぞ。