「音楽納会vol.2」 〜 ムッシュかまやつ×沼澤尚

よく晴れた冬の日曜の宵。
大阪は北浜DETAJ(デタイュ)で、ムッシュかまやつ沼澤尚のライヴを観る。「音楽納会 Vol.2」と称したこのイベント、昨年の第一回はザ・スパイダースムッシュとともに活躍していた井上堯之さんのライヴだったという(わたしにとっては、ショーケン井上堯之バンド)。主催者である川井さんは、出会ってまだ日が浅いので謎も多いけれど、その印象は洒落心と男気にあふれる大人。四ツ橋筋となにわ筋のあいだの立売堀にショップとアトリエを構える「Workers for 335」という革グッズのブランドオーナー/デザイナーで、わたしはこちらのオーダーメイドのブックカバーと鞄を使っていて、さりげない洒落心とステッチの色や金具にまでこだわった職人魂とデイリーに使える気軽さをあわせもっているお気に入りで、これからクタクタのあめ色になる過程も楽しみ。さいきんはアトリエを自ら改装してサロンを開いて、そこに置かれた古き調度品や棚いっぱいに詰め込まれたレコード、いくつものスピーカーなどからも、そのセンスが見て取れます。そんな、大阪のアニキ(と呼びたい)の渇望と熱情が招いたムッシュナイト。

土佐堀通から南にすこし入った高麗橋のたもと、川のほうへ下る階段の先には、地下とは思えない天井の高さと古い洋館のような白壁のスペースが広がっていた。大きな窓枠をキャンバスに見立てて川沿いに草木が茂っている。余談ですが、THE MICETEETHの「one small humming to big pining」という曲のPV撮影に使われたのもここで、映像ではすこしわかりにくいけれど、穏やかな時間を重ねてきたのだろうと想像できる気もちのよい空間。

七十歳を過ぎたはずのムッシュ、のびやかで色気のある歌声。沼澤さんのドラムがリズムをキープしながら、ムッシュの声とギターを心地よく遊ばせる。名高い沼澤さんのドラム、実際に見てみたら、名声とは根拠あってこそのものと納得せざるをえないすばらしさだった。たしかな技術とタイトなリズムキープ、柔軟な表現力と引き出しの多さ。沼澤さんのプレイはなにより寛大で、ムッシュをサポートしてフォローし、そして時にはグンとリードしていく。それはあまりに見事で、夢中で引き込まれてしまった。軽く茶目っ気たっぷりのムッシュのMCをはさみながら、「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」「どうにかなるさ」「バン・バン・バン」などの曲が次々に演奏され、ついには客席からゴーゴーダンサーが飛び出てくるほどの大盛り上がり。長年のファンはもちろんのこと、あの場にいた全員がムッシュに惚れたのはまちがいない。

 

アンコールでは、今日入籍したばかりのベーシスト、和田拓くんが呼ばれてムッシュの祝福を受けつつ一緒にセッション。「大阪の有名なスカのバンド、マイスティースの…」と紹介しておきながら、演奏するのはブルース。午前二時すぎまでつづいた打上げでの饒舌ぶりも含めて、どこまでも気さくなサービス精神に敬礼。ムッシュありがとう!