埴谷雄高『死霊』を読んでいる。現在第二章。濃密な対話ばかりが重なり遅々とした時間がそのまわりをドロリと取り囲む。第一章のはじめであまりにまどろっこしい物言いに早々に躓き、この乗りきれなさは中学生のときにヘッセの『車輪の下』(母親に薦められたものの何度読んでも序章から先を読む気がしないでプイと投げだして今に至る、し、別にもうどうでもいいやという気持になっている)か、高校生のときに大江健三郎の『同時代ゲーム』を読んだとき以来だよー(しかしすぐに盛り上がり寝ずに読んだのだった)と思ったが、力技で乗り込んでしまえば気難しい彼らの対話を傍観することぐらいはできるようになった。対話の途中に挿入される「あっは」「ぷふい」という間投詞だけが親しき仲間。