夏のしっぽ――八月前半の記録

夜と朝のあいだをまたぐみじかい眠りから覚め、ぼんやりとした欲望の世界から逃げていくおかしな夢のしっぽを、名残惜しくググッとつかまえなながら、夏が飛んでいっちゃうと、不意にあせった八月は残暑。夏のしっぽをつかまえて、どうかこのまま飼いならしてしまいたい。穂高で撮った絵葉書みたいなベストショットをこころの糧に暮らしていきましょう。じつにいい空だったなあ。机上で旅日記を書き出したら、たましいがまた旅に出てしまいそう。

「水の旅」についてはあとで記憶を引っぱりだすことにして、まずは八月前半をいくつか覚え書きしておきましょう。

八月七日、木曜日。神宮外苑花火大会。娘十六お転婆時代に仕立てた蝶柄の浴衣。プリントものではなく、染物の反物から仕立ててもらった浴衣はじまんの一着なのだ。赤い半幅帯を文庫ではなく相変わらず貝の口に締めていたのは、何か明確なアンチテーゼがあるわけでもなく、単純に時間切れだったから。でもこのいかにも「さっと締めました」という感じは結構すき。デートではないのはモチのロンなこと、数時間に渡る肉体労働に追われ、「たまたま浴衣を着て働いた夜に、空に花火が上がっていた」というようなシチュエーション。闘いのあとのビールはじつにうまい。今年は南青山の清水湯には行かず、午前三時には畳のうえで夢の国。働いたと身体が実感できる充実感がすきだ。根っからの体育会系、ガテン人生、浴衣の色もブルーカラー

八月十日、日曜日。バレエレッスンのあと、銀座一丁目のルテアトル銀座で「珍しいキノコ大図鑑」。楽日ということもあり、なかなかに混んでいた。結成十八周年という「珍しいキノコ舞踊団」、はじめて観たのは二〇〇〇年前後、あの娘とあの子が付き合い出すほんの数ヶ月前のこと、天王洲アイルでの『あなたが『バレる』と言ったから』。キノコはどこで見てもキュートで、そっけない。十八周年記念ということで、舞台の内外をぞんぶんに使って、過去のシーンも織り交ぜて、じつに贅沢なショーを見せてくれた。あいかわらず軽やかで、にくらしげで、じつにすばらしい! 自分が何かを観たときに、うわ、あの子にも教えたいと思えるようなものごとに出会えることは、贅沢で、うれしく、そしてちょっとイジワルく、先立って観られたことに得意になる。キノコを満喫したあとには江古田バディへ。渋さ知らズ鉄割アルバトロスケットの合同公演。渋さ知らズでは「玄海灘」のフィッシャーマン、渡部真一さんの結婚祝いから派生したこの芸能と音楽の夕べ。なかなかにバランスがよく大いに笑った。ハッピーな夜、いろいろなひととのおしゃべりはゆかいで、思いのほか江古田を出るのが遅くなり、吉祥寺からの終電車にあわてて飛び乗った。

体育館でカンカンをウキウキと踊っていたら、漫画家の桶屋ねずみちゃん(扶桑社のコミック誌「マリカ」のサイトで作品を立ち読みできます)から、すてきなイラストをいただききました。イエーイ、うれしいのでここで自慢します。


<おまけ>
八月十九日に杉並区と一部中野区のセブンイレブンにて「なみすけパン」が発売。発売日の午前八時に買って、なみすけとともに電車に乗った朝。ここ最近のなみすけの活躍は目ざましく、町のなみすけサポーターとしても追っかけにいそがしい日日です。ブログの更新も頻繁です。
→【てくてく×なみすけ】